Up 事例 : 遺骨訴訟 作成: 2017-07-18
更新: 2017-07-18


    北海道新聞 2017-07-14
     
    北大に遺骨返還求め提訴 旭川アイヌ協議会
     【旭川】北大が研究目的で保管するアイヌ民族の遺骨2体の返還に応じないとして、旭川アイヌ協議会と川村兼一会長(66)は13日、遺骨と副葬品の返還と謝罪、慰謝料300万円を求める訴訟を旭川地裁に起こした。原告側は、祖先の供養ができず、憲法で保障される信教の自由が侵害されていると主張している。
     訴状によると、遺骨は旭川市内の墓から掘り出されたもので、1951年に道警旭川方面本部から北大に寄託された。北大は85年、5体を返還したが、その後の大学側の調査で2013年、遺骨2体と副葬品が残っていることが発覚した。

    毎日新聞 (北海道版) 2017-07-14
     
    アイヌ遺骨 返還求め北大を提訴 旭川の団体
     北海道旭川市のアイヌ民族の団体「旭川アイヌ協議会」と川村兼一会長は13日、北海道大を相手取り、同大が保管するアイヌの遺骨2体と副葬品の返還、慰謝料300万円の支払いを求める訴訟を旭川地裁に起こした。
     訴状などによると、遺骨と副葬品は旭川市内に埋葬されていたが、何らかの理由で発掘された。1951年に北海道警から寄託されて北大が保管。協議会などの要求で85年に5体が返還されたが、北大の調査で2013年に2体が新たに返還されていないことがわかった。
     協議会は遺骨・副葬品の返還と謝罪を求めてきたが、北大は応じる姿勢を見せないため、提訴に踏み切ったという。
     提訴後の記者会見で協議会側は「遺族の承諾なしに墓地から掘り起こされ、返還も一部にとどまっている」と指摘。川村会長は「アイヌの宗教観が全く無視されてきた。謝罪し、遺骨と副葬品を返してほしい」と訴えた。
     北大は「訴状が届いていないのでコメントは差し控えたい」としている。


    遺骨外交というのがある。
    外交関係が立っていない,あるいは滞っている相手との外交突破口として,遺骨収集事業を用いるというものである。
    なぜこれが政治ゲームとして有効なものになるかというと,《自明/問答無用》──「遺骨返還は,自明/問答無用」──がこのゲームのルールになるからである。


    「遺骨返還」の想念,これは「遺骨」フェティシズムに還元される。

    「遺骨」フェティシズムは,一つの文化である。
    「一つ」の意味は,「普遍的ではない」である。
    実際,生物一般は,「遺骨」フェティシズムとは無縁のものである。
    そして,アイヌも,「遺骨」フェティシズムとは無縁のものである。

    実際,自然の中で生かされている者は,死骸は朽ちて地や宙に返り,跡形も無くなるのをよしとする。 自然の生態がそのようなものであることを,カラダで知っているからである。

    翻って,「遺骨」フェティシズムは,自然ではなくなった生活に現れてくるものである。
    人類史では,農耕が「遺骨」フェティシズムの契機ということになる。
    アイヌ史 (アイヌ系統者史) だと,「遺骨」フェティシズムは「和人化」の内容になる。


    マスコミは,時の《自明/問答無用》に従い,かつこれを醸成・強化することが役割である。
    《自明/問答無用》に対し,これを批判する役割のものは,科学である。
    また,前科学的形態として,思想・文学・アートである。

    遺骨返還は,自明/問答無用」に対する根底的な批判の形は,上に述べた《「遺骨」フェティシズムの文化性》である。
    そして,現前の文化に少しおもねた格好の批判として,《「遺骨」の帰属問題》が立つ。


    何者が,件の「アイヌ遺骨」の帰属権利を主張し得るか。
    主張し得る者はいない。
    しかしここに,権利者を装う者が現れる。
    その者は,自分を「アイヌの代表」に仕立てる者──特殊な精神構造により,自分を「アイヌの代表」に仕立ててしまう者──である。
    その精神構造は,「前衛イデオロギー」である。

    このイデオロギーは,自分を「アイヌの代表」に仕立てるだけではない。
    自分を「正義の代表」に仕立てる。
    そして自分の行動を,「悪の退治」と定める。
    実際,一般に,イデオロギーのイデオロギーたる所以は,「世界を<善悪>でとらえる」である

    科学する者がここでよくよく留意すべきは,「前衛イデオロギー」は是非のはなしではないということである。
    科学の科学たる所以は,「世界を<関係性>でとらえる」である
    科学にとって,「前衛イデオロギー」は生態系の力学の主題である。
    「個の多様性」には,《集団は「前衛イデオロギー」の者を一定比率で設ける》が含まれてくるのである。





    以下,「ピリカモシリ」(http://pirikagento.jugem.jp/?eid=155) から引用

     
    << 北大糾弾ニュース 2017 年5月22日 66号 | main | 新刊『アイヌ民族の遺骨は告発するーコタンの破壊と植民地支配』 >>

    北大は、旭川アイヌ民族の遺骨等の返還・謝罪・話し合いを!
    | 2017.06.03 Saturday | - | 12:48 | - | - | - | - | by eternapaco
    旭川アイヌ協議会、旭川アイヌ協会が連名で
        遺骨等の返還と話し合いを北大へ申し入れ

    〒060-0808
    札幌市北区北8条西5丁目
    国立大学法人 北海道大学
    総長 名和豊春 様
    2017年6月1日 
    〒070-0825
    旭川市北門町11
    川村カ子(ネ)トアイヌ記念館内
    旭 川 ア イ ヌ 協 議 会
    会長 川村シンリツ
      エオリパック アイヌ
        0166(51)2461
    〒070-0824
    旭川市錦町15丁目2979-18
    丸山ハイツ2号
    旭 川 ア イ ヌ 協 会
    会長 中 井 百 合 子
        0166(52〕7555
      

    遺骨等の返還と話し合いの申し入れ
    前略
      旭川アイヌ協議会と旭川アイヌ協会は、北海道大学に対して遺骨等の返還と話し合いをおこなうことを連名にて要求します。あわせて、私たちの先祖であるアイヌ民族の遺骨を北海道大学が墓地を暴くなどして勝手に持ちさったこと、研究材料にしてきたことなどについて公式文書による謝罪を求めます。
     北海道大学は2013年3月、佐伯 浩総長名で『北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』(以下『北大医学部調査報告書』といいます)を発行しました。
     しかしながら、アイヌ民族に断りもなく遺骨を収集し、差別的な研究の材料とし、民族の尊厳を今なおいちじるしく傷つけてきたことに関して、この『北大医学部調査報告書』は旭川など当該の各地域のアイヌ民族にたいして何ら説明も謝罪もしていません。『北大医学部調査報告書』を各地域のアイヌ民族団体などに手渡してもおらず、検討する機会も奪ったままの状態にしてきています。
     私たち旭川アイヌ協議会と旭川アイヌ協会は、この『北大医学部調査報告書』を検討し、これまでも北海道大学との話し合い要求を毎年申し入れてきています。
     『北大医学部調査報告書』の107頁に「医学部収蔵アイヌ人骨の照合調査(2010年〜2012年度)で、古人骨中に、返還したはずの『旭川1』(頭蓋)、『旭川2』(頭蓋・四肢骨)・・・が存在していることが判明した」と記載されているのを知り驚きました。これを知った仲間たちは「エッ、そんな事があるのか!断じて許されない」と怒りをあらわにしています。
     1985年の遺骨返還は間違った返還であったのです。1985年に返還された5体の頭骨が安置されています納骨堂『殉郷殿』(アイヌ民族共同墓地)では毎年8月にイチャルパ(供養)を欠かさずおこなっていますが、2014年7月に改めてイチャルパを行い、遺骨の状態を点検してみました。びっくりしました。「旭川2」は小骨だけでした。この遺骨は本当に旭川のアイヌ民族の遺骨であったのでしようか。確認していただきたいと思います。
     また『北大医学部調査報告書』の106頁では「返還された5体は火葬にして・・・納骨した。」と書かれていますが、火葬などしていませんでした。これだけでもデタラメな『北大医学部調査報告書』と言えます。しかも間違った返還についての直接の報告と謝罪は未だにありません。
     この点について、2013年10月31日、辻 邦章・北大総務企画部総務課長から川村兼一と杉村フサ宛に文書がとどいています。そこには『北大医学部調査報告書』には「記載が適切ではない箇所がありましたので」として「火葬にして」の部分を抹消すると訂正してきたのです。 どうしてこのような誤りがおこったのか、何の説明もありません。この訂正文は『北大医学部調査報告書』を配布しているすべての機関、人たちにも送付されているのでしようか。  
      また『北大医学部調査報告書』を読んで、旭川アイヌ協議会の仲間たちに沸き起ってきた疑問は、なぜ医学部だけの調査に限定しているのか、です。北大総合博物館、北方生物圏フィールド科学センター(北大植物園内の博物館)、さらには文学部が札幌の大乗寺に仮安置しているアイヌ民族の遺骨と思われる頭骨などを、何ゆえに調査対象から除外しているのでしようか。
     さらにまた、旭川に即して言えば、『北大医学部調査報告書』の22〜23頁に記載されている山崎春雄教授らの「アイヌの生体計測研究」を怒りもって弾劾します。1936年2月3日〜2月11日の期間、旭川市近文で184人のアイヌ民族に対して、人類学的計測、頭部の「精密ナル」生体測定、頭部の「正確ナル」三方面からの写真撮影、などを行ったと書いています。さらに加えて「『アイヌ』人容貌ノ人類学的観察」も行ったと書いています。
     このような計測、撮影、観察などはアイヌ民族を侮辱するものです。それについての何らの謝罪も反省の文も記載されていません。むしろ「貴重な資料」を今日まで保管してきたことを誇っています。さらに私たちは北大に対して、これら生体計測などのデータ、写真を見せるよう情報公開を求めましたが、北大は「個人情報」を盾にして閲覧さえも拒否しています。反省すべきです。
     私たちの基本的な考え方は、アイヌ政策推進会議-文部科学省-北大がアイヌ民族の意見、気持ちを無視して強引に進めている白老の「慰霊・研究施設」建設計画には絶対反対です。アイヌ民族の遺骨は、各大学、研究機関の謝罪と自らの責任によって、謝罪と慰霊が込められた碑を建立し、故郷(コタン)に丁重に返還すべきなのです。
     最後になりましたが、アイヌ民族の遺骨を故郷(コタン)に返還する運動は、杵臼、紋別、浦幌では裁判で和解が成立し、杵臼はすでに返還・埋葬され、他の地域はこれから埋葬されることとなっています。北海道大学は、裁判における裁判長からの勧告によるのではなく、自らの判断でもって返還の申し入れに応えるべきではないでしようか。
      以上の理由から、私たちは北海道大学に対して下記について要求し、話し合いを求めます。


    1、北大は、旭川、釧路、門別のアイヌ民族にたいして、返還すべき遺骨を返還していなかったことなどを謝罪するとともに、何ゆえにそのような間違った返還を行ったのか、その真相を明らかにすること。
    2、北大は、返還されていなかった2体の遺骨を、1985年に返還された5体の遺骨が安置されている納骨堂『殉郷殿』(旭川市旭丘のアイヌ民族共同墓地、旭川市が川村シンリツエオリパック アイヌに管理を委託している)にただちに返還し、納骨すること。
    3、北大は謝罪のうえ、人権侵害の身体測定の記録、および写真とフィルムを旭川アイヌ協議会と旭川アイヌ協会の会員に閲覧させ、すべての記録の取り扱いを会員の意志にまかせること。
    4、北大は、遺骨とともに埋葬されていた副葬品を、旭川アイヌ協議会が事務所を置いている川村カ子(ネ)トアイヌ記念館もしくは郷里(旭川)のアイヌ民族が共同で利用している生活館(旭川市緑町15)に返還すること。
    5、政府(文部科学省)-アイヌ政策推進会議-北大は、全国の大学からアイヌ民族の遺骨を白老に集中させる「慰霊・研究施設」の建設計画を直ちに中止すること。

     なお、話し合いの場所は北大構内の会議室、大学からは総長、医学部長、総務企画部長の出席を要請します。話し合いの期日は7月上旬、話し合いの時間は最低でも3時間は必要です。大学が都合のいい日時の案を3日ほどを示してください。その中からこちらで都合のよい日時を選びご連絡します。なお、この申し入れ書への文書回答は6月20日までにされることを強く要請しておきます。

    以 上