Up イトラスケ,サイモン 作成: 2018-11-22
更新: 2018-11-22


       村上島之允 (1809), p.631
    イトラスケといふは、イトは鼻をいひ、ラスケは()るをいひて、鼻を截るといふ事也。
    是は不義に女を犯したる者を刑する也。
    凡夷人の境、風俗純朴なるによりて、盗賊とふの事もすくなく、まして人を殺害する事などは稀成ゆへ、刑の用ひかたも多からず。是にいふ鼻を截るが如きは至極の重罪となす也。
    サイモンといへるは此語の解未だ詳ならず、其用ひかたは、たとへば罪を犯したる者ありて、鞠訊(きくじん)を盡すといへどもあへて其罪に伏せざる時、熱湯をまうけ、それに手を入させて其虚實を糺す也。
    古史に見へたる武内宿禰の行ひし探湯(くがだち)の法などいはんが如し。
    此刑を行ふ事、多くは女子の上に有事なり。