「ウタリ協会」は,「代表」の役職名をもつと,自分を「アイヌ系統者の代表」のように思い上がり,そして自分の気にくわない表現にクレームをつけ,相手を脅迫する,という組織である。
クレーム・脅迫を受けた側も,これに対し「アイヌ系統者の代表」の扱いをしてしまう。
この者たちは,ともに「表現の自由」の敵である。
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太田竜「「お荷物小荷物・カムイ編」論」, 1972.
太田竜『アイヌ革命論』収載,pp.121-139
pp.121-122
以下に、「ウタリ協会石狩支部・代表小川隆吉」のHBC (北海道放送) あての『抗議文」全文を引用する。
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現在貴テレビ局は、毎週土曜日夜十時よりドラマ「お荷物小荷物・カムイ編」を放映しているが、その中で "菊" という北海道出身のアイヌ系の娘が登場し、また時々「コシャマイン」なるアイヌ人も登場させている。
そして "菊" に「私たちアイヌは、子供の時から熊と友だちのようにあそび──」などと語らせたり、服装も江戸時代の頃のアイヌ人同様にこらし、そして出演の男性たちになにかと虐待させたり、はては「アイヌでもいいから結婚したい」といったり、アイヌ系日本人を頭から差別し蔑視をした内容をくりかえして、いまだに平然と放映している。
このドラマは、とうていまじめな態度で「アイヌ問題」をあつかっているものではなく、明らかに、アイヌ系日本人を意識的に異人あつかいをし、観客あつめの奇をてらった、ふざけたものでしかありません。ドラマは、多くのアイヌ系日本人のウタリが、今も江戸時代の昔の姿で生活し熊などのけものといっしょに暮しているような誤解をあたえる時代錯覚もはなはだしいものです。
このような事実でない放送は、多くの人々に、現在のアイヌ系日本人の正しい姿をゆがめ誤解をあたえるばかりか、ウタリにたいする差別と偏見を助長させる重大な内容をもっている。
私たちアイヌ系日本人のウタリはながい年月にわたって、まったくいわれのない人種的偏見と差別にくるしめられてきた。そしていまなお「アイヌ」を見世物みたいに利用する非人道的な観光業者やマスコミが横行していることに日夜心をいため、はん悶してきたが、真実を守り公正であるべき貴放送局が、多くの人々に誤解をあたえ、アイヌ系住民に対する偏見をひろめ、ウタリたちに大きな精神的苦痛を与えたことは絶対にゆるすことはできない。
貴局は、多くのウタリにこのような迷惑をかけたことにたいして、すみやかに陳謝すべきである。
私たちは、この際こんどどんな理由からも、大小とわず、このようなアイヌ系日本人に対する差別と蔑視のいっさいをゆるさず、その不当性を多くの人々にうったえて、かならず糾弾することを表明し、貴局の責任ある態度を要求する。
昭和四十七年二月二十五日 ウタリ協会石狩支部代表 小川隆吉 HBC殿
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pp.122,123
『毎日新聞』一九七二年三月十五日号から、「"アイヌベっ視" と抗議され放映中止」 という記事を引用する。
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HBC (北海道放送・室谷邦夷社長) で土曜日夜に放映している連続ドラマ「お荷物小荷物・カムイ編」の内容が、少数民族のアイヌをベっ視するものであるとして、十四日午後、ウタリ協会石狩支部の小川隆古代表ら十人が、同局に抗議し@放映中止A放映による謝罪などを申入れ、同局は、十八日に予定されている十六回目の放映を中止することを決めた。十七回以降の番組についても再検討する。
この番組は佐々木守作で、大阪・ABC(朝日放送) が制作、TBS (東京)、CBC (名古屋) 、RKB (九州) などの全国十七局で放送している連続ドラマ、副題のカムイ編が示すように、中山千夏がふんする "メノコ" が登場して毎回、アイヌが話題になっている。
小川代表らは@アイヌの英雄コシャマインがへんな神様として登場するAアイヌの生活を誤解した言動がある、などの三点を中心に二月二十九日「同番組はアイヌをベつ視している」と文章で抗議さらに十四日、抗識を申入れた。
同局の斎藤編成業務部長は「抗議を受けたさい、ただちに制作局のABC に善処を申入れたが、連続ドラマは、二、三週分を先に録画するのがシステムなので抗議を無視しているように思われているが、局の誠意を示す意味で十六回を中止した。十七回以降についてはABCでも、なんらかの措置をとると思われる」と説明した。
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