政治"アイヌ" は,「アイヌ手当」を勝ち取ることを,務めにする。
「アイヌ手当」を求める理由として,
を立てる。
そしてこのために,「ずっと虐げられ,困窮している」者を組織する。
物乞"アイヌ" を組織するというわけである。
政治"アイヌ" は,物乞"アイヌ" を要する。
つねに,物乞"アイヌ" をプロパガンダしなければならない。
政治"アイヌ" が演出する物乞"アイヌ" ──「アイヌはずっと虐げられ,困窮している」──は,虚偽である。
文学"アイヌ" は,これの批判に向かう。
鳩沢佐美夫は,つぎを著しているとき,この文学"アイヌ" である:
「対談・アイヌ」,『日高文芸』, 第6号, 1970.
(『沙流川─鳩沢佐美夫遺稿』(草風館, 1995) 所収)
以下,『沙流川─鳩沢佐美夫遺稿』から引用する。
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p.161
その貧富の差ということで、われわれがまったく関知しないところで、変なデータがあがっちまっているんだ。
‥‥‥
つまり、アイヌはこれだけ貧しいのだ、という新聞発表があったりした。
そして、その翌年から "旧土人環境改善策" という国の施策が打ち出されたわけだ。
★ へーえー。そうかな、私の住んでいたH町にも、そんなに困ったような人がいなかったと思うけどね。
☆ うん、だからね、誇張という断定まではしたくないが、他の面でアイヌの貧しさが利用されている、ということを、まず指摘したいのだ。
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pp.211,212
だから、過去の不当性を口にすると、なんかたまらなく空しいんだ‥‥‥。
なぜに、今こそ、この時点で‥‥‥とね。
そして一方に、媚びるような姿を見たり言葉を聞くと、倣慢にも腹立たしくなるんだ。
──被害者は、お前たちばかりじゃないだろう‥‥‥ って──。
戦後ッ子のあんたは見たことがあるかどうかわかんないけどね、以前に "傷病軍人" といって、募金箱を持った白衣姿の復員兵を街角などでよく見かけたもんだ。
この人たちは、第二次大戦で負傷し、手足をもぎとられたりした痛ましい戦争の犠牲者たちだ。
ところがあまりにも同情をかうような恰好をしたり、執劫に列車内などを戦争の不当性を訴えながら募金を呼びかけるんでね、国民からそっぽを向かれちまった──。
つまり、戦争の犠牲者はあんたたちばかりじゃない──ってね。
あの戦争で肉親を失ったり、家を焼かれた人、また精神的にも死をも体験するような被害を、当時の国民は皆蒙ったんだ。
そんなことで、この犠牲者も、いつしかわれわれの前から姿を消しちまった──ね。
それだけに、アイヌ問題もそうならないように‥‥‥。
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