Up 「搾取」 作成: 2017-02-05
更新: 2018-12-16


      河野本道・渡辺茂 (1974), p.159
     請負人はいわゆる知行主の代行として、当然アイヌ住民の介抱を義務づけられていたにもかかわらず、しかし、しょせんその本質は商人であり目的はあくまで利潤追求にあった。
    したがって漁場を奪われ新しい生産方法を強いられたアイヌは、もはや自主性を失いその多くは労働力として動員され、またそれを快よしとせざる者もあらゆる欺満と悔蔑による不等価交換によって搾取され、しだいに商業資本によるアイヌ社会の分解作用を起していった。

    アイヌ学者による「アイヌ搾取」の言い方は,だいたいが上のようである。

    また,「あらゆる欺満と悔蔑による不等価交換によって搾取され」の言い回しは,時代背景を斟酌してやる必要がある。
    その時代は「アンガージュマン」を唱えることが流行りであり,学者は,学術をする者ではなく,イデオロギーをする者になった。


    学術は,「搾取」を機能的に論じてナンボである。

    1万円で手に入れた絵を百万円で売る。
    これについて,「不等価交換」とか「欺満・悔蔑」のことばを使ったら,それは経済学の無知を曝すだけである。
    ──《1万円で手に入れた絵を百万円で売る》は,このときの面相が悪人面であろうと善人面であろうと,関係ない。 心根が悪かろうと善かろうと,関係ない。
    商品経済とは,こういうことをするものである。

    商品経済は,労働力に対しても,このやり方を用いる。
    これを,経済用語で「搾取」という。


    「巧みな営業戦術」は,「あらゆる欺満と悔蔑」と区別がつかない。
    商品経済は,「欺満と悔蔑」も営業戦術に含めるものである。
    そしてこれは,良い悪いの話ではない。
    単にこれが商品経済だということである。


    引用文献
    • 河野本道・渡辺茂 (1974) : 河野本道・渡辺茂 編『平取町史』, 北海道出版企画センター, 1974