Up 和人のアイヌ観 作成: 2019-02-26
更新: 2019-02-27


      平秩東作 (1783), pp.423,424.
    蝦夷人は道理につまりぬれば強いてあらかふ事ならず。
    忽首をたれてあやまり居るなり。
    是正直なる故なり。
    然るに此方より渡る船方の者ども、物のわきまへもなきむくつけき者なれば、ひとへに愚なりとのみ覚へて侮りかすむる事大方ならず。
    通辨など云者は、松前の役人の様にいひなすものなれば、蝦夷人も敬ひ重んずるを、勝にのりていろ/\の難題を言かけ、人中にでも大地に引伏打鄭し踏にじりなどする躰、見るに忍びずといへり。
    かくすれども、蝦夷人かつて手出しもせず。
    其譯は蝦夷地へ渡りぬる時、松前より上乗の役人そい行て條目を讀聞する時、領主より其方共養育のため此者をさし遣はさるゝ間、是に封し失禮すべからざるよしを巖敷(きびしく)云渡すにより、日本人を恐るゝ事甚し。
    西の蝦夷は柔順なり。
    東の蝦夷は豪強なり。
    拙く愚なる様なれども、死を極ぬれば甚だ心剛なりといへり。
    あしく取あつかひなば後々は心ひがみて害有べしと思わる。
    近き頃も憤りをいだき自殺したる蝦夷もありといふ。
    窮鼠猫を喰のたとへ恐れざるべけんや。

      東寗元稹 (1806), p.38
    蝦夷人の性甚だ魯にして、恩をわすれ、しかも恨をいだくに惠を以てすれば(おこた)りすさみ、暴を以てすれば隨がはず。
    是事服事せしむる事又難し。
    今番人と稱する者、多くは亡命、或は無頼の凶漢、親族棄逐せられて遠く遁れ來れる輩にして、夷人を指揮するも又直ならず。
    爰を以て夷人も自然と化せられて奸にはしり((易))し。
    いたむべき事也。


    引用文献
    • 東寗元稹 (1806) :『東海參譚) :『蝦夷日記』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.23-44.
    • 平秩東作 (1783) :『東遊記』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.415-437.