Up 偶然と必然 : 要旨 作成: 2018-09-10
更新: 2018-09-10


    地震との遭遇は,偶然である。
    地震に遭遇した者は,不運な者である。

    一方,地震に遭遇したときの被災状態は,必然である。
    地震に遭遇した者が傷ついたり死んだりするのは,不運とは言わない。


    ひとは,地震に遭遇したとき自分がどのように被災するかを,予め知ることはできない。
    被災は,複雑系だからである。
    ただし,だいたいはわかるというものもある。
    ──《手で揺らして倒れる本棚の下に寝ていれば,地震でその本棚の下敷きになる》の類

    しかし人は,「地震に遭遇したときの被災」を考えるようにはできていない。
    「地震に遭遇したときの被災」を考えたら,いまの生活がし(にく)くなり,あるいはさらに,できなくなるからである。
    そこで「地震に遭遇したときの被災」には,思考停止することになる──思考停止で済ますしかない。

    実際,個人レベルでは,「なるようにしかならない」が智慧ということになる。
    <考えてもどうしようもないこと>を考えれば,見当違いのソルーションにのめり込み,それを災いにしていくのが落ちだからである。