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2018-09-07 読売新聞
火力 ドミノ停止 北海道大停電
「苫東厚真」頼み裏目
北海道全域が一時、ほぼ全域が停電となる「ブラックアウト」に陥ったことは、北海道電力の発電網が、震災に対し脆弱であることを浮き彫りにした。全面復旧には1週間以上かかる見通しだ。
発電網 道西部に偏り
■震源地
6日午前3時過ぎに地震が発生した直後、震源地近くの苫東厚真火力発電所が緊急停止した。1、2号機から蒸気が漏れ、4号機はタービン付近から出火した。同発電所の発電能力は 165万キロ・ワット。道内の使用電力の約半分を供給する電源が失われると、数分以内に他の火力発電所も次から次へとドミメのように停止した。道内のほぼ全世帯で電気が使えなくなった。全国で電力の需給調整を行う認可法人「電力広域的運営推進機関」によると、大手電力会社の管轄の全域で停電するのは初めてのケースだ。
■周波数
なぜ、このような事態が起きたのか。
電力は、発電する量と消費する量がおおむね一致するように調整されている。夏場にクーラーの使用などの電力消費が増えれば、火力などで発電する量を増やして対応する。この発電と消費のバランスで電力の周波数が決まり、北海道電力の管内では 50ヘルツ程度に収まるように調整している。
しかし、今回のように電力の半分を賄う基幹電源が失われると、大幅に発電量が減って周波数も低下する。周波数が乱れると発電機のタービンの軸が振動で壊れるといった恐れが生じる。タービンが破損すれば修理に時間がかかり、長期にわたり発電できなくなる。
こうした事態を防ぐため、大手電力会社は、電力の需給バランスが崩れた場合、他の火力発電所も一斉に停止する仕組みがある。
それでも、予想を超えた事態だったようだ。北海道電力の幹部は6日、記者団に対し、「今回のような大きなトラブルは考慮しておらず、(訓練などでも) 数時間での復旧を想定していた」と語った。
■種火
北海道電力の真弓明彦社長は6日午後の記者会見で「苫東厚真がダメージを受けており、復旧には1週間以上かかる」と説明した。
電力供給の再開には時間がかかる。北海道電力は6日、まず道内の水力発電所を稼働。これを「種火」として、順次、火力発電所に電力を供給して稼働させる。火力発電所を再稼働するには、別の発電所から電力をもらう必要があるためだ。
6日中には、まず砂川3号機が復旧し、約33万戸で停電が解消された。
北海道と本州をつなぐ送電線「北本連系線」も活用するが、北海道側で電流を変換するための電力が必要で、すぐには生かせない状態だ。
山口順之・東京理科大講師 (電力系統工学) は「北海道は札幌や函館などの都市が西部に集中していることもあり、東部に発電所が少ない。電源が偏っていることも課題だ」と指摘する。
運転を停止した北海道電力苫東厚真火力発電所。
全道に影響が広がっている(6日午後3時、
北海道 厚真町で、本社ヘリから)
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泊原発 稼動遅れも一因
停電は、地震や落雷、大雪など様々な自然現象の影響で起きる。電線や変圧器など、電力を送るための設備が損傷することなどが主な原因だ。
地域を限って起きる停電は、復旧も比較的、早い。大阪北部地震では、大阪府や兵庫県の一部地域で停電したが約3時間で復旧した。
2011年の東日本大震災では、対象地域や日時を事前に予告し、順番に強制的に停電させる計画停電が首都圏を中心に実施された。福島第一原発など大規模な電源を失い、電力の需給バランスが大幅に崩れたためだ。このときは、消費者側の需要を抑えることで調整した。
今回のように広域的に電力供給がストップする「ブラックアウト」の事例は 2003年、ニューヨークを含む米北東部やカナダ南部にまたがる広域エリアでも起きている。
北海道では、札幌市の周辺エリアに北海道電力の火力発電所や泊原子力発電所など、多くの発電所がある。しかし、北海道電力の火力発電所のうち、多くが運転を停止していた。原発に比べて、燃料費など発電コストがかさむため、「通常は稼働させていない」(電力関係者) ためだ。
そもそも、泊原発は 2012年5月に運転を停止して以降、再稼働していない。こうした事情が重なり、広域的な停電のきっかけになった苫東厚真火力発電所に電力供給を依存する構造になっていた。
東京電力ホールディングスや関西電力などでも、東京湾沿岸などに火力発電所は集積している。ただ、電力需要が多い分、特定の発電所に大半の供給を頼る状況ではない。
東電は、陸続きの東北電力と中部電力からの電力融通が可能だ。冬の需要逼迫時には100万キロ・ワット単位で融通してもらってきた経験もあり、「地震が起こってもブラックアウトが起きないような運用をしている」(広報) という。
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