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読売新聞, 2020-02-01
新型コロナ 感染者の行動公表 割れる
自治体 風評被害を懸念
新型コロナウイルスに感染したバス運転手らの行動をどこまで公表するかで自治体の対応が分かれている。
市民の不安の払拭とプライバシー保護のどちらを重視すべきかの判断は難しく、自治体からは、国が統一的な見解を示すよう求める意見も出ている。
■独自に判断
「詳しい事実を伝えることで、冷静に対応してほしいとの思いで発表した」。
大阪府の吉村洋文知事は先月30日、報道陣に対し、そう強調した。
自治体ごとに対応が分かれるのは、28, 29日に感染が確認された運転手の奈良県の男性 (60歳代) と、男性のバスに同乗し、ツアーをガイドした大阪市の女性 (40歳代) の立ち寄り先だ。
2人については、「人から人」への感染の疑いが浮上している。
府は30日、ガイドの女性が発症前、中国・武漢市のツアー客と大阪市内のベイエリアや大阪城周辺などを回ったことを明らかにした。
府は28日の時点で、府内の感染者が確認された場合、立ち寄り先や滞在日程などを公表すると決めており、感染拡大のリスクが高いケースについてはさらに詳細な情報を公表することも検討する。
女性が受診した医療機関がある東京都も31日夕、今後、都内の医療機関で感染が確認された人については同意を得て移動経路などを公表する方針を決めた。
■翌朝一転
感染症法は、国と都道府県に対し、感染症の発生状況などを積極的に公表することを促しており,国はエボラ出血熱など危険性の最も高い「1類感染症」については公表基準を定める。
ただ、新型コロナウイルスは、同法上の「2類感染症」に相当し、公表の範囲は、国や都道府県の判断に委ねられる。
運転手の男性が住む奈良県は、感染が判明した28日夜、緊急記者会見を開いたが、立ち寄り先については風評被害を理由に公表せず、具体的な居住地なども「個人の特定につながる」として回答を拒んだ。
しかし、翌29日朝になると一転し、対策本部会議で荒井正吾知事が、男性がツアー客を乗せ、奈良公園 (奈良市) などに立ち寄ったことを明らかにした。
県は理由について「疑心暗鬼にならないよう、正確な情報を出したい」と説明した。
男性の訪問先の一つ、神奈川と山梨両県が公表したのは、滞在日程にとどまる。
山梨県の長崎幸太郎知事は、羽田の記者会見で「必要以上の情報を出してパニックを引き起こすのは好ましくない」と語った。
厚生労働省が情報公開を主導すべきだとの意見は根強い。
武漢市からの旅行者の感染が判明した北海道の鈴木直道知事は31日の記者会見で、「感染力の判明が進む過程で社会に与える影響などを考慮し、発症前の状況については、国が全国統一の考え方を示すべきだ」と訴えた。
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