新型ウィルス対策の相手は,超複雑系である。
これを御せる者はいない。
これに流されるのみである。
政府の新型ウィルス対策も,この流れの中にある。
春節中国人訪日客への対策は「発症が認められる者のみを入国させない」であったが,実際,他に選択肢は無いわけである。
新型ウィルスの感染は,通常のウィルス感染と変わらない。
即ち,《ウィルス感染は体が直す》ということに,変わりはない。
違うのは,この場合は新型なので病院が無力になる,という点だけである。
しかしこの度,政府の対策は,入国制限発動にまで至った。
これは,外国と行き来する日本人にまで影響が及ぶので,ひどい混乱を招くことになる。
──実際,ひどい混乱があるので,「発症が認められる者のみを入国させない」がこれまでの対策だったわけである。
政府が対策に躍起になってくるのは,対外的体面が理由である。
日本は,「経済のグローバル展開」「観光立国」の国なので,日本の状況が外国からどう受けとめられるかに神経を尖らすことになる。
「経済のグローバル展開」に関することでは:
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読売新聞, 2020-03-08
米の入国制限回避に躍起
政府 経済に打撃,欧州追随も
政府は、米国が新型コロナウイルスの感染拡大を理由に日本からの入国を制限しないよう、米政府への働きかけを強めている。
入国が制限されれば、経済活動が打撃を受け、欧州諸国などが追随する可能性もあるためだ。
政府は感染対策を説明し、正確な情報に基づいた判断を求めている。
「米国は日本に対する入国制限措置は取っていないし、そうした動きを導入するという具体的な話もない」
茂木外相は6日の衆院外務委員会でこう述べ、「引き続き、丁寧な働きかけを行っていきたい」と強調した。
政府が働きかけを強める背景には、日本の感染リスクに対する米国内の警戒感の高まりがある。
トランプ大統領は3日、日本などの国名を挙げて「状況を注視している」と述べた。
5日にはニューヨーク市長が日本から帰国した同市民に14日間の自主待機を求めた。
米国が日本からの入国を制限した場合、両国の経済に深刻な影響が及ぶ。
2018年の統計で、米国を拠点とする日系企業は8929社 (外務省調べ) に上り、米国への渡航者数は約349万人 (日本政府観光局調べ) に達するためだ。
外務省幹部は「日本の同盟国である米国が入国制限をすれば、経済面だけでなく、政治的な影響も大きい」と指摘する。
日本に対して入国・入域を制限しているのは7日午後1時現在、太平洋島嶼国や中東などの計27か国・地域だが、医療水準が高い米国が加われば、欧州などの国も後に続く可能性がある。
政府はこれまで外務、厚生労働両省が米政府との連携を図ってきた。
杉山晋輔駐米大使は2月以降、エイザー保健福祉長官と面会を重ね、他国と比べて人口当たりの感染者数を抑えられていることや、水際対策を強化していることなどを説明している。
両省は米疾病対策センター (CDC) や在日米国大使館への働きかけも続けている。
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そして「観光立国」に関することでは,いまは「オリンピック開催」が喫緊の問題になっている。
即ち,"totally under control" を──今月末くらいを期限に──外に示さないと,外国から「オリンピック開催は無理」と見られるようになってくる。
政府は,オリンピック開催を絶対命題にするものであるから,「"totally under control" を外に示す」の方が「入国制限に含蓄されるるひどい混乱」よりも優先されてくるのである。
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