Up 交差免疫 作成: 2020-05-19
更新: 2020-05-19


      読売新聞, 2020-05-15
    未感染者半数すでに免疫?
    米研究チーム 過去の風邪影響か
     新型コロナウイルスにまだ感染していない人の約半数が、すでに免疫を一定程度持っている可能性があるとする研究結果を米ラホイヤ免疫研究所の研究チームが近く米科学誌セルで発表する。 過去に他のコロナウイルスに感染した経験が影響したとみられている。 感染や重症化をどの程度防ぐ力があるかは不明だ。
     研究チームは、流行が始まる前の2015〜18年に米国で収集された20〜60歳代の保存血液20人分を調べ、約半数から新型ウイルスを認識する免疫細胞「ヘルパーT細胞」を検出した。
     ヘルパーT細胞は、「免疫の司令塔」とも呼ばれ、ウイルスを攻撃する抗体を別の免疫細胞「B細胞」に作らせるなどの役割がある。 研究チームは、風邪の原因となる通常のコロナウイルスに感染した経験によって、免疫系が新型ウイルスも認識できるようになる「交差免疫」が起きたと考えている。
     新型ウイルスによる感染症は、多くの人が無症状や軽症であることが知られる。 奥村康・順天堂大特任教授(免疫学)は「コロナウイルスに感染することが多い子供が、新型に対して重症化しにくいことも、交差免疫で説明できるのではないか」と指摘する。
     コロナウイルスに詳しい水谷哲也・東京農工大教授(ウイルス学)は「交差反応があったとしても、新型コロナウイルスへの防御力がどれだけあるかは分からないので、さらに研究が必要だ」と話している。

      Alba Grifoni (LJI), et al. (2020), p.2.
    SUMMARY
    Understanding adaptive immunity to SARS-CoV-2 is important for vaccine development, interpreting coronavirus disease 2019 (COVID-19) pathogenesis, and calibration of pandemic control measures.
    Using HLA class I and II predicted peptide ‘megapools’, circulating SARS-CoV-2-specific CD8+ and CD4+ T cells were identified in ~70% and 100% of COVID-19 convalescent patients, respectively.
    CD4+ T cell responses to spike, the main target of most vaccine efforts, were robust and correlated with the magnitude of the anti-SARS-CoV-2 IgG and IgA titers.
    The M, spike and N proteins each accounted for 11-27% of the total CD4+ response, with additional responses commonly targeting nsp3, nsp4, ORF3a and ORF8, among others.
    For CD8+ T cells, spike and M were recognized, with at least eight SARSCoV-2 ORFs targeted.
    Importantly, we detected SARS-CoV-2-reactive CD4+ T cells in ~40-60% of unexposed individuals, suggesting cross-reactive T cell recognition between circulating ‘common cold’ coronaviruses and SARS-CoV-2.


    「交差免疫」の含蓄は,大きい。
    例えば,「新型コロナ」感染の様相が国・地域によって違っていることも,この概念によって了解されるわけである。

    翻って,「パンデミック」の実態は,「免疫力の弱い者が,重症化し死ぬ」である。
    総人口に対し「免疫力の弱い者」の数の比が大きい国・地域は,死亡率が高くなる。
    昔のパンデミックがすさまじい死亡数にのぼるのは,貧しい生活が理由で免疫力の弱い者が多いからである。
    例えば「スペイン風邪」だが,これの猛威は第一次世界大戦が背景にある。 ──塹壕の中で飢えて凍えていれば,感染が死に直結する道理である。

    日本が「新型ウイルスによる感染症は、多くの人が無症状や軽症」──実際,死ぬのは,高齢者か持病持ち──なのは,生活が相対的に豊かだからである。
    この場合の新型ウィルスに際するときの肝要は,《免疫力を低下させないため,過労を避ける》である。

    なお,新型コロナによる死亡数を多いと見るか,少ないと見るか,あるいはまあまあと見るか──これは「総死亡数・死因別死亡数」が頭に入っていないことには,話にならない。


    ひとは,自分が「小さき者たちとの共生」という形で生かされていることを知らない。
    「小さき者たちとの共生」を信じるということを知らない。
    「医療・衛生」「除菌・無臭」プロパガンダにすっかり騙され,病院・薬依存症になっている。
    かくして,「新型コロナ」に際するや,いまの<引き籠もり>のざまになるのである。
    「ざまねえや」というわけである。


    引用文献
    • Alba Grifoni (LJI), et al. (2020) : Targets of T cell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals, Cell.
        https://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674(20)30610-3.pdf