ボソ となわばりが隣合うカラス (「隣のカラス」) は,特定していない。
ただし,種はブトである──繁殖期にもボソ の周りにはブトしか見ないので。
備考
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松原始 (2015), pp.248-251
そもそも、動物が縄張りを持つのは、独占的に利用できる空間を確保することで資源を占有するためだ。
雄が他の雄の侵入を嫌うのは、自分の父性を確保するためである。
要するに浮気が怖いのだ。
一夏かけて必死になって他人の子供を育てるのはリスクが大きすぎる。
そうすると、縄張りを誰から守るべきかと言えば、全ての資源が競合する相手、すなわち同種で同性の他個体を真っ先に警戒すべきである。
繁殖の対象にならず、餌も生活空間も全く違うのならば、同じ場所にいても何ら困らない。
ハシブトガラスとハシボソガラスではどうかというと、繁殖という点ではライバル関係にないが、餌はそれなりに重なってしまう。
ただ、この2種は餌の好みや探し方がやや違うので、同種どうしほど完全に重なるわけではない。
営巣場所もよく似ているが、若干の譲り合いの余地はある。
ハシボソガラスは落葉樹でもそれほど嫌がらないからである。
実は、この2種が同所的に住んでいる場合、お隣さんは異種であることが多い。
また、同種同士と異種同士で最も近い巣の間の距離を計ると、同種間の距離が大きい傾向がある。
茨城県の研究でも徳島県の研究でも、あるいは私の京都の研究でも同じ傾向で、恐らくどこでも同じであろう。
これは「競争があるにしても、お隣さんとしては異種の方がまだマシである」という理由だろうと考えられている。
いざとなればハシボソを容易に追い払えるハシブトにとっては、「同種は近づくな (ハシボソならそんなに怖くないけど)」なのであろう(註2)。
註2 | お隣さんが異種になりがちなのは、ハシブトガラスがハシボソ2ぺアの間に割り込むからではないか? という気がしないでもない。‥‥‥ 最初にみんなで一斉に「せーの」と縄張りを決めるわけでもあるまい。
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この論は,「いざとなればハシボソを容易に追い払えるハシブト」の見立てに立っていて,そこで特に「ハシブトガラスがハシボソ2ぺアの間に割り込む」の推理になるわけである。
しかしこの見立ては,少なくともボソ の場合にはあてはまらない。
引用文献
- 松原 始 (2015) : カラスの補習授業』, 雷鳥社, 2015
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