Up 「復興・防災」イデオロギー : はじめに 作成: 2019-03-15
更新: 2019-03-19


    イデオロギーとは,「正義」を立てる思考様式のことである。
    イデオロギーは,「正義」イデオロギーである。

    イデオロギーは,「悪」を立てる。
    イデオロギーは,「勧善懲悪」イデオロギーである。


    「困窮」は,イデオロギーが「悪」として立てるものである。
      《困窮は悪者がつくっている;この悪者を倒さねばならない》

    このイデオロギーは,かつては共産主義イデオロギーないし社会主義イデオロギーの形をとった。
    しかし,共産主義国家・社会主義国家がどうなるものかを見てしまったので,今日これに即く者は稀少になっている。
    「困窮」に対する「勧善懲悪」イデオロギーの今日の形は,「賠償」イデオロギーである。

    「賠償」イデオロギーが勝ち取る金には,これの分け前に(あずか)ろうとする者たちが群がる。
    彼らは,分け前システムを固定・強化していく。
    これは,利権の醸成である。

    こうして,「賠償」イデオロギーは,「賠償」利権と結ぶことになる。
    そしてこれは,イデオロギー全般に成り立つことである。



    さて,「災害」も,イデオロギーが「悪」として立てることになるものである。
    イデオロギーは,災害を「人災」にする。
    悪人を立て,彼らに賠償をさせるとともに,改心の正義を行わせようとする。
    前者は「手当」,後者は「復興・防災」である。
    そして,この二つに対し,それぞれ利権が醸成される。

    「復興・防災」の内容は,土木工事とマニュアル作成である。
    これはひとり歩きする。
    ひとり歩きしているのは,系である。
    個人は,系の運動から<疎外>される。
    「ばからしい」と思いつつ,集団の中ではそれを言えない。
    集団では,「ばからしい」が「正義」になる。(「裸の王様」ダイナミクス!)


    イデオロギーの装う「正義」は,独善である。
    「復興・防災」も,同断である。

    例えば,今日いちばんの自然破壊──生態系破壊──は,復興・防災土木工事である。
    大規模土木工事は生態系破壊の観点から抑制されているが,「復興・防災」を大義名分にすると何でも通るようになる。
    河川・山林の生態系が破壊され,海岸の生態系が破壊される。

    「正義」イデオロギーは,ダブルスタンダードである。
    「自然保護」を正義にする者は,一方で「復興・防災」を正義にする者である。
    「正義」の者とは,己の自家撞着がわからない者のことである。

    この「正義」の者たちを,利権が持ち上げる。
    「正義」の者たちは,これを勘違いして,自分の正しさが示されたと思う。


    マスメディアは,「正義」イデオロギーに即く。
    そしてこれにより,結果的に利権に即くことになる。
    彼らは,自分に都合よく声を選び,「皆の声」に仕立てる。
    彼らが選ぶ声は,「正義」イデオロギーと利権の声である。

    よくよく吟味すべし──報道はこの虚構が内容である。
    報道は,受け手がこの了解のうえに上手に付き合うところのものである。