Up | 「災難」の意味──出来確率のダイナミクス | 作成: 2019-04-04 更新: 2019-04-05 |
そして災難は,系の遷移の一局面を,ひとの都合で「災難」と呼んでいるに過ぎない。 自動車事故発生数とその内容は,毎年ほぼ一定している。 地域を小さくとれば変動を見るが,大きくとるごとに一定していく。 こうなるのは,自動車事故が確率事象だからである。 自動車事故を確率事象にしているのは,一つの系Sのダイナミクスであるが,このダイナミクスは複雑である。 模式的にこれを表現してみる。 系Sの下位には,周期運動する系
系 sn の時刻tでの位相を pn(t) とするとき,
「時刻tにだれそれが自動車事故を起こした/に遭った」は,P(t) の一内容である。 そして,tを1年間に亘らせると,「自動車事故発生数とその内容は,毎年ほぼ一定」となるわけである。 特定個人Aが<自動車事故を起こす/に遭う>は,sn (n ∈ N) がそれぞれとる位相の組み合わせとして表せる。 この組み合わせの全体を,
そこで,Aにおいて<自動車事故を起こす/に遭う>が実際になるとは,
これは,滅多に起こりそうもない事に見える。 そこで,ひとは「まあだいじょうぶだろう」の思いで,車を運転したり,道路を歩行したりしているわけである。 いまはわかりやすさのために「自動車事故」を例にしたが,これが「災難は確率事象」の意味である。 「災難」のタイプによって,S,{ sn | n ∈ N },{ { an,k | n ∈ N } | k ∈ K } を適宜考えることになる。 災難の そこでひとは,過去のデータをもとに,統計的に確率を引き出している。 「今後30年以内に東南海地震が発生する確率は 60%」などと言っているのは,これである。 統計的言表は,個人の次元の災難の出来確率のダイナミクスを隠蔽するという害悪がある。 実際,この種の言表において,個人は<疎外>される。 翻って,「災難」の思想では,「個人の次元の災難の出来確率のダイナミクス」の考えが軸になる。 |