Up 「復興」キャンペーン : 要旨 作成: 2016-03-25
更新: 2016-03-26


    大災害後の生態系のステージは,「遷移」である。
    大災害は,生態系を変える。
    遷移は,不可逆である。
    大災害以前の生態系に戻ることはない。

    「復興」は,「復旧」ではない。
    「もとの生活を取り戻す」でないことは,惨状と喪失の内容が示している。

    「復興」とは,なにがどうなることか?

    ひとは,最初,その内容に思考停止するふうに「復興」を漠然と思う。
    行政も,ひとにはこの相で「復興」を思ってもらいたい。
    「復興」に<不明>の念がもたれると,共同体的連帯が壊れ,人の流出が加速する。
    これは,被災地の自治体にとって不都合なことである。

    中央行政も,被災地自治体の都合に合わせていく。
    この他ではあり得ないからである。

    「復興」キャンペーンは,政治である。
    その内容は,欺瞞である。
      重要:<欺瞞>は,政治の本質である。


    時間が経ち,事態の進捗がはかばかしくないのを見て,ひとは「復興」の意味が「別の生活に移行する」であることを理解する。
    そして,「別の生活になかなか移行できない」の意味で,「復興にひどく時間がかかっている」の不満を表していくことになる。

    行政も,「復興」のことばはなかなか言えるものでないことを,骨身に染みて理解する。
    また,この間,「復興」事業の中身もおかしくなっている。
    即ち,行政の事業は箱物中心になるのがつねであるが,「復興」事業もこうなってしまう。

    典型が,嵩上げ工事と防潮堤工事である。
    嵩上げ工事は,無意味な工事である。
    ──待機しているうちに,ひとの生活がなくなる。
      そして,出来上がったとき,それはひとの生活する形ではない。
    防潮堤工事は,無意味な工事である。
    ──その防潮堤には,機能がない。
    しかし,被災地当事者の行うことに異論をはさむことは,だれにとっても憚られる行為になる。
    事業を始めた者も,引っ込みがつかない格好になっている。
    こうして,いつもの「無意味だが,一旦始めたらやめられない箱物事業」の再現となる。


    生態学は,この現象を,「これの他にはない」と捉える。
    現前は,現成であり,理 (系の力学) の実現である。