Up 肉用牛繁殖経営は,飼料価格高騰で赤字経営に転落 作成: 2022-11-02
更新: 2022-11-02


    肉用牛の飼料は,つぎの2つに区分される:
    • 粗飼料──牧草, 乾草, サイレージ
    • 濃厚飼料──とうもろこし, 大豆, 麦, ふすま等

    農水省畜産局飼料課『飼料をめぐる情勢』(2022年10月) によると,飼料の自給率 (2021年度概算) は:
    • 粗飼料 76%
    • 濃厚飼料 13%

    自給率の低さは,輸入原料価格が流通飼料価格に直接はね返る。
    そして現在,輸入原料価格の高騰により流通飼料価格の高騰となっているわけである。

農水省畜産局飼料課『飼料をめぐる情勢』(2022年10月) から引用:
配合飼料輸入原料価格の推移



GD Freak!「配合飼料の価格の推移」から引用:


    この価格高騰で,肉用牛繁殖経営は赤字経営になる。
    実際,農水省『令和2年 肉用牛生産費』によれば,
      令和2年で,経営コストに占める飼料費の割合が約40%。
      そしてこれの約 2/3 が流通飼料費,1/3 が牧草・放牧・採草費。
      よって,生産コストの少なくとも 40 x 2/3 = 27% が流通飼料費。
    いま令和4年となって,流通飼料価格が令和2年のときの価格の2倍近くになっている。
    よって,生産コストがつぎのような割合で増える:
    しかも,生産費から流通飼料費を引いた残りも,いま進行中の物価上昇で大きくなっているわけである。


    赤字経営をやっていくことは,肉用牛繁殖経営農家にはできないことである。
    そして,状況が好転する兆しも見えない。
    実際,いまの値上がりに対しては,「堅調に推移」という表現がなされている。

    飼料の自給も,夢の話である。
    農水省畜産局飼料課『飼料をめぐる情勢』(2022年10月) には,濃厚飼料自給率の目標が「令和3年の13% を令和12年には15%に」となっている。 とても話にならない。