Up 円安物価上昇 作成: 2022-06-15
更新: 2022-06-15


    日本の財政は,「金を造ってばらまく」である。
    「金をばらまく」の狙いは,《金が消費に使われて景気がよくなる》である。

    「金をばらまく」は,《生業の困難を訴えてくるところに気前よく金をばらまく》に進む。
    こうして,税収がだいたい 60兆円前後なのに対し,例えば 2020年だと第1次・2次・3次補正予算で計 136.3 兆円の金を造ってばらまくという,途方もないことになっている。

    そこで「こんな財政が成立するのか?」「何か恐ろしいことになるのではないか?」の疑問になる。
    そしていま,赤字/造金財政の破綻の形がはっきり見えるようになってきた。
    「円安物価上昇」である。


    赤字/造金財政は,金を消費に使ってもらうために,金を造ってばらまく。
    ばらまいた金が消費に使われなければ,何にもならない。
    消費に使われないとは,貯蓄に回されるということである。
    そこで,貯蓄に回されないために,金利を下げる。
    貯蓄に回されないことを確実にするために,さらにマイナス金利にする。

    しかし国は,独りで生業っているのではない。
    その金利は,他国の金利と比べられる。

    金利を収入にして生業う者は,円を持っていることが不利になる。
    ここでアメリカが高金利政策をとると,円をドルに換えることになる。
    そして彼らの取引が,円の交換レートを決める。
    その結果が,円安である。

    日本は,1次産品を輸入で賄う。
    よって,円安は物価高になる。
    一般個人の収入は,増えない。
    これだと,生活は困窮に向かう。


    この「生活困窮」に対し,日本の財政はやはり「金を造ってばらまく」で対応することになる。
    こうして,《金を造ってばらまく → 生活困窮》がスパイラルになる。

    このスパイラルが現す「生活困窮」はどれ程のものか?
    あれこれ予想するより,いま進行していることを観察する方が早い。

    「金を造ってばらまく」は「現代貨幣理論 (MMT)」の説くところであるが,日本の財政はこれの壮大な実験になっている。
    有り難く観察すべし。

読売新聞, 2022-06-14



読売新聞, 2022-06-15