Up | 官製賃上げ : 要旨 | 作成: 2022-01-22 更新: 2022-01-22 |
新型コロナに「緊急事態」で応じたことにより,経済活動が狂い,そして財政出動が繰り返されてきた。 大衆はまだわかっていないが,日本の経済・財政は危ない状況になっている。 政府の方は,この状況に危機感をもつ。 その思いは,「不況のサイクルに入ってしまったら最期!」である。 そこで,不況サイクルに絶対陥らないよう,手立てを考える。 経済界への賃上げ要請は,この流れで出てくるものである。 景気は,人の消費マインドで支えられている。 ──経済の危うさは,消費マインドに根拠が無いこと,そしてこの根拠のないものに依っていることである。 消費マインドを萎ませないためには,金をもたせねばならない。 岸田内閣が「新しい資本主義」と称して分配政策を掲げるのは,この認識が理由である。 分配政策は,賃金労働者に対しては「賃上げ」が対策になる。 この度は,経済界に「3%以上の賃上げ」を要求することになった。 経済界はこれを「官製春闘」と呼んでいるが,巧く言ったものである。 要求は,ことばではない。 取引である。 「国の方から金をやるから,賃上げをやってくれ」である。 そしてこの「国の方から金をやる」が,「優遇税制」というやつである。 何のことはない,賃上げは国が金を払うのである。 しかし,「賃上げは国が金を払う」ということであれば,「優遇税制」はまどろっこしいやり方ということになる。 実際,税で優遇しても,そっくり賃上げに回してくれるかどうかわからない。 経済界は狡猾である。 「優遇税制」は,上品ぶったやり方である。 上品に対しては,下品がある。 それは「直接支給」である。 実際,政府は直近では「国民一人あたり10万円支給」のバラマキをやったところである。 財政はもう何でもありになっている。 直接支給に対してとやかく言う者は,財務省の中にももういない。 直接支給の方法は? 「財政投融資」を名目にする直接支給である。 「財政投融資」とは,紐付き国債のこと。 賃上げの紐をつければよい。 「賃金労働者一人あたり,賃金の3%分を支給」──構造は「国民一人あたり10万円支給」と同じ。 賃金労働者の数は,だいたい3千万人くらい。 年に一人あたり平均20万円の給付なら,総額6兆円である。 仮に100万円でも30兆円で,新型コロナでの一回の財政出動の支出額より小さい。 日本国民は兆の単位の額にはもうすっかり慣れている (感覚麻痺している) から,6兆円なんか安いもんだと思ってくれる。 このように「新しい資本主義」は,具体化の形はいろいろであるにせよ,「国が金を創って国民に給付」がこれの内容である。 なんだか不思議なことになってきたが,ここは生態学/進化学の趣きで興味深く観察していくところである。 |