Up 主食米の経済 : はじめに 作成: 2024-09-06
更新: 2024-09-07


      読売新聞, 2024-08-23
    コメの棚空っぽの異常事態
    秋の新米で品薄解消しても価格は大幅上昇

    猛暑で供給減・訪日客増で需要増
     コメが全国的に品薄となっている。昨年の猛暑で供給が減った一方、訪日客の回復で需要が増えたことなどが要因で、スーパーなどの店頭では商品が欠品したり、購入数量が制限されたりしている。2024年産米の出荷が本格化する9月下旬には品薄が解消する見通しだが、新米の価格は大幅に上昇している。
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    在庫最低水準
     コメが品薄となっている背景には、昨夏の猛暑による品質低下で供給量が減ったことに加え、訪日客数が過去最高ペースで推移して業務用需要が増えたことがある。農林水産省によると、6月末の民間在庫量は前年同月より約2割少ない156万トンと、過去最低水準になった。
     さらに、今月8日に発生した宮崎県沖の日向灘を震源地とする地震を受け、南海トラフ地震への備えからコメを買いだめする動きも出て、品薄に拍車をかけている。ただ、同省は「24年産米の出荷が本格化すれば、品薄は解消する」と冷静な対応を呼びかけている。
    早場米4割高
     品薄は価格にも響いている。JAと卸業者など業者間の23年産米の相対取引価格(60キロ・グラムあたり、全銘柄平均)は6月に1万5865円と、東日本大震災後のコメの在庫不足の影響があった13年8月以来、約11年ぶりの高値をつけた。7月はやや下がったが、前年同月より13%高かった。
     出回り始めた新米は大幅高の様相だ。収穫開始が7月と早いことから新米相場の指標として全国的に注目される宮崎県産「早場米」は、ある地区のJA買い取り価格(60キロ・グラム)が1万9000円超と、前年より約4割上がった。
     コメ卸大手の担当者は「多くの卸業者が在庫を確保しようと、近年にない高値で買い付けている」と指摘。他の産地分も含めて早場米の店頭価格が5キロ・グラム3000円前後と前年の約2倍に上がっており、流通量が増える9月下旬でも新米価格は2500円前後になるとみている。
     福岡市西区の米穀店「吉村商店」は、飲食店など得意先への価格を前年の1・5倍に引き上げて交渉を始めた。吉村正太代表は「これまでの価格が安すぎた。物価や資材、燃料価格も上がっている。農家にも値上げ分が還元されるよう、消費者に理解を求めながら適正価格で売っていくしかない」と話している。


    ひとは,新聞の言うことは鵜呑みにする。
    ひとはこの記事を読んで,いまの米不足を「猛暑で供給減・訪日客増で需要増が理由なんだ」と納得する。
    ひとは,簡単に騙される。

    いまの米不足は,構造的なものである。
    主食米は,収穫量が減少の一途になっている。
    収穫量が減少の一途なのは,作付面積が減少の一途だからである。
    作付面積・収穫量が減少の一途なら,米不足が来るに決まっている。
主食米生産量の最近5年間の推移:
農水省「令和5年産水陸稲の収穫量」から引用:
作付面積 (千ha) 収穫量 (千t)
2019 1379 7251
2020 1366 7226
2021 1303 7007
2022 1251 6701
2023 1241 6610

    なぜこのあたりまえの理を,「猛暑で供給減・訪日客増で需要増」などとごまかすのか?
    あたりまえの理が不都合になる者は,こういう姑息なごまかしをしたくなるのである。

    ひとは米不足に際すると,自分を「農政 (ノー政) に翻弄される被害者」にする。
    作付面積の減少は,農政がこれを進めているからである。
    しかしその理由は,米余りである。
    農政にしても,「身勝手な国民に翻弄される被害者」なのである。


    主食米は,余る一方で不足するというものである。
    これは,主食米の論理──即ち,主食米の経済──の含意である。
    誰か・どこかに問題があるという話にはならない。
    本論考は,これを見ていく。