Up 中山間地域の消滅 作成: 2024-09-19
更新: 2024-09-19


    中山間地域は,商店は顧客が少ないので成り立たない。
    中山間地域での居住は,近くの町へアクセスする足のあることが必要条件になる。
    また,その中山間地域のある自治体は,その足のための道路を維持していかねばならない。

    今日,生活の便利・不便は,都市の生活が基準になる。
    よって,中山間地域の生活は不便な生活ということになり,国はこれに手当てすることになる。
    「僻地手当」というわけである。
    国はこれを,「直接支給」として定めている。

    直接支払の現在の根拠法は,
    • 『食料・農業・農村基本法』(1999) の第35条第2項
       「 中山間地域等においては、適切な農業生産活動が継続的に行われるよう農業の生産条件に関する不利を補正するための支援を行うこと等により、多面的機能の確保を特に図るための施策を講ずる」
    • 『農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律』(2014) の「中山間地域等における農業生産活動の継続を推進する取組」(第3条第3項第2号)


    直接支給の額は,つぎのようになっている:
「平成29年度 海外農業・貿易投資環境調査分析委託事業 報告書 (EU)」,2018. p.188 から引用:


中山間地域等直接支払の予算額推移
(単位:百万円)
年度 2014 2015 2016 2017 2018
28,474 29,000 1.2 26,300 26,300 26,340


    直接支給は,農地当たり。
    農地の地目は田・畑・草地・採草放牧地であり,それぞれの交付面積がつぎのようになっている:
中山間地域等直接支払 交付面積 (地目別)
「平成29年度 海外農業・貿易投資環境調査分析委託事業 報告書 (EU)」,2018. p.195 から引用:
内訳 面積(ha) 構成比
306,552 46.4%
55,182 8.4%
草地 284,830 43.1%
採草放牧地 14,163 2.1%


    手当は,あくまでも手当である。
    寒冷地手当は,その地を温暖地に変えるわけではない。
    僻地手当は,その地を町に変えるわけではない。
    中山間地域はいま消滅の一途であるが,中山間地域への直接支払は「中山間地域の消滅を押し止める」の意味が付くものではない。

    「自分は中山間地域出身であり,中山間地域の味方」を説く政治家もいるが,それは自家撞着である。
    「この地は自分が留まるところではない」と定めて中山間地域を出たのであり,「自分がそうなら皆もそうだ」としなければならないからである。