Up 「米を食うと太る」 作成: 2024-09-10
更新: 2024-09-10


    日本人の米離れを促すキャンペーンの一つに,かつて「米を食うと太る」というのがあった。

    ひとは因果を,プロセス (メカニズム) で考えず,「○○をしたらバチがあたる」のように即対応で考える。
    そこで,何の考えもなく「米を食うと太る」キャンペーンに嵌まることになった。


    本論考には直接関係はないが,「太る」のメカニズムを一応押さえておく。

    この「太る」は,「ヒグマは冬眠前にたくさん食べて太る」の「太る」である。
    これは,「食いだめ」である。
    食いだめが必要な生き物は,食いだめのシステムを進化させる。
    翻って,「太る」を嫌う時代は,食べ物がつねにある時代である。

    「太る」の中身は,カロリーを脂肪の形で貯えるである。
    この脂肪が増えるのが「太る」である。
    なぜ貯える形が脂肪かというと,カロリーの収納密度が大きいからである。
    「脂肪の形で貯えると,太らないで済む」というわけである。

    食事でつくられる脂質は,大部分がトリグリセリド。
    これを脂肪細胞が,脂肪酸およびグリセロールに変換して取り込む。

    エネルギーが必要になったとき,体は「脂肪燃焼」システムを発動する。
    「燃焼」と謂っているその中身は:
    1. 脂肪は遊離脂肪酸に分解され,ミトコンドリアに渡される。
    2. ミトコンドリアは,これをエネルギー (アデノシン三リン酸 ATP) に変える。

    生物学の理解では,ミトコンドリアはもともと外部生物で,これを細胞内に取り込んだことが動物の進化の重要な内容になっている。
    植物だと葉緑体が,「外部生物を細胞の中に取り込んだ」であると考えられている。

    こう見てくると,脂肪を大事にしたくなるだろう。


    しかし,この世は脂肪のネガティブキャンペーンばかりである。
    発信元は薬事医療産業。
    脂肪を悪にして人を脅し,薬を買わせ病院に通わせようというわけである。

    ひとはこの商法に,まんまと騙される。
    そして,わざわざストレスを抱え込み,体を(いびつ)にし弱らせる。