研究資料の使用目的で,2003-11-28 現在の http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki2/28.htm をここに複製させていただきました。

学校教育

大学改革


   「知の時代」と言われる21世紀、人材大国・科学技術創造立国を目指す我が国にとって、大学の役割は極めて重要です。
   平成13年6月に提示した「大学(国立大学)の構造改革の方針」により、これまでの大学改革の流れを更に加速し、活力に富み国際競争力のある大学づくりを目指した取組を行っています(1、2、3)。
   また、大学教育の改善に資する種々の取組のうち、特色ある優れたものを選定し、広く社会に情報提供することにより他大学の取組の参考とし、高等教育の活性化の促進を図っております(4)。
   第155回臨時国会では学校教育法の改正を行い、大学が主体的・機動的な運営を行えるようにすることを目指して、国 による大学への事前規制を減らす一方で、大学の質を継続的に保証するシステムの導入を図る(5)とともに、国際的・社会的に通用する高度専門職業人の養成 を目指し、新たな大学院制度の整備を行いました(6)。



1   国立大学の再編・統合

   国立大学の再編・統合は、各大学の枠にとらわれず、限られた資源の有効活用により、教育研究基盤の強化を図ることが必要であるとの認識から進められているものです。
   各大学においては、各々の将来の発展という観点から幅広く検討がなされてきました。また、文部科学省においては、各大学の自主的な検討を尊重しつつ、支援や助言を行ってきました。
   現在、再編・統合は着実に進展し、既に昨年10月には全国の国立大学に先駆けて2組4大学が統合し、本年4月から新大学として学生を受け入れています。
   また、本年10月には10組20大学が統合予定です。さらに、1組3大学が平成17年10月の統合に合意しています。その他の数大学においても、大学間で協議が進められているところです。
   各国立大学においては、今後とも、教育研究の充実強化(パワーアップ)の観点にたって、再編・統合を含めた多様な組 織改革を検討していくことになりますが、文部科学省としても、その検討の熟度等に応じ、支援・推進を図ります。

国立大学の再編・統合


2   国立大学の法人化

   欧米諸国では、国立大学や州立大学を含め、大学には法人格が付与されているのが一般的です。それに対して、我が国の国立大学は、行政組織の一部として位置付けられており、独立した法人格を有していません。
   我が国の国立大学が急速な社会や経済のグローバル化・知識化や社会の高い期待に今後も対応し、世界中の大学と競争し ていくためには、国立大学に国から独立した法人格を与え、自主的・自律的な運営を可能とする必要があります。
   国立大学の法人化後の制度設計については、昨年3月に有識者等による調査検討会議の最終報告がとりまとめられました。
   具体的には、
1 独立行政法人制度を活かして法人化することにより、国の事前規制を緩和し、事後チェック方式への移行を図り、各大学の個性に応じて、その努力や実績が適切に評価され、国立大学の個性的な発展が図られること、
2 教職員の身分を非公務員型とすることにより、各教職員の努力と実績に応じた処遇の実現や、産学官連携など教員の多彩な活動を活発化させるなど、各大学における弾力的な制度設計を可能とすること、
3 役員会による学長のトップマネジメントを導入することにより、透明で機動的・戦略的な大学運営を実現すること、
4 法人の経営面を審議する機関として新たに経営協議会を設けるとともに、学外者を半数以上入れることにより外部の視点を大学経営に導入すること、
などです。
   文部科学省では、最終報告に基づいて制度設計を行ってきましたが、本年2月にこれらを盛り込んだ「国立大学法人法案」ほか関係6法案を国会に提出し、平成16年4月に法人へ移行することを目指しています。
   我が国の高等教育制度の特徴は、国公私立の大学が多様な発展をとげてきたところにあります。その中でも、国立大学 は、学術研究の水準の向上に中核的な役割を果たすとともに、地域配置や分野構成等の面で我が国の高等教育制度の均衡ある発展に貢献してきました。
   国立大学の法人化は、これらの社会から期待されている役割をより確実に実現するためのものであり、法人化がこれからの大学改革の起点となるよう高等教育行政を進めていくこととしています。

国立大学法人法案の概要

拡大図はこちら




3   第三者評価による競争原理の導入
   平成14年度より、「21世紀COEプログラム」を実施しています。
   これは、第三者評価に基づく競争原理の導入により、国公私立大学を通じて学問分野別に世界的な研究教育拠点(大学院博士課程レベル)の形成を重点的に支援し、世界最高水準の大学づくりを推進する事業です。
   このため、文部科学省の外で日本学術振興会を中心に運営する21世紀COEプログラム委員会(江崎玲於奈委員長)において、研究教育活動実績や当該大学の将来構想に基づき、公正な第三者評価を実施します。
   全学問分野を10分野に構成し、初年度である平成14年度に5分野、残り5分野については平成15年度に公募を行いました。

公募対象

   平成14年度は163大学464件の申請の中から、50大学113件が採択され、1件あたり年間1〜5億円程度の補助金を原則として5年間継続して交付することとしています。
   また、平成15年度は225大学611件の申請を受け付けました(採択拠点の決定は、15年7月頃の予定)。
   このプログラムにより、大学全体の活性化につながることを期待しています。


4   特色ある大学教育支援プログラム
   平成15年度より「特色ある大学教育支援プログラム」を実施します。
   これは、国公私立大学(短期大学を含む)を通じ、大学教育の改善に資する種々の取組のうち、特色ある優れたものを選 定し、今後の高等教育の改善に活用する事業です。その選定は、文部科学省の外で財団法人大学基準協会を中心に運営される実施委員会(絹川正吉委員長)にお いて、公正に行われます。
   また、選定された大学に対し、既存の経費の配分枠組みの中で必要な支援も行います。

選定の流れ


5   大学の質の保証に係る新たなシステムの構築
   社会の急速な変化や国際化、グローバル化などの大学を取り巻く環境が大きく変化する中で、諸外国においても、「知」 の基盤である大学の教育研究水準の維持・向上を図るため、積極的に大学改革に取り組んでいます。その中でも大学評価については、大学の国際的通用性の向 上、国際競争力の強化等の観点から、各国とも改革の重要テーマとしています。
   また、近年の我が国の行政システムにおける事前規制から事後チェックという改革の流れの中で、大学に対する国の関与 の在り方についても、大学の自主性・自律性を一層高める観点から、その見直しの必要性が指摘されてきました。
   このような背景を踏まえ、我が国の平成14年8月の中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築 について」においては、我が国の大学の自主性・自律性を踏まえつつ、大学の教育研究の質の維持向上を図り、その一層の活性化を促すための新たなシステムが 提言されました。この答申を受けて、第155回臨時国会で学校教育法が改正され、以下のような制度改革が行われました。
   第一は、設置認可制度の見直しです。これまで、大学の学部などを設置する際は、文部科学大臣の認可が必要とされてい ましたが、今後は、大学が社会の変化などに対応して機動的・弾力的に学部などを整備できるように、大学として授与する学位の種類や分野の変更がない場合に は、文部科学大臣への届出のみで足りることとしました。
   第二は、違法状態にある大学に対する段階的な是正措 置の導入です。現行の措置としては、基本的には大学自体の閉鎖命令だけでしたが、今後は、閉鎖命令に至る事前の措置を整備し、(ア)改善を勧告する、 (イ)勧告をしても状況が改善されない場合は変更を命じる、(ウ)それでも改善されない場合は学部等の組織の廃止を命じる、と段階を踏んだ是正が可能とな りました。
   第三は、第三者評価制度の導入です。大学の質を恒常的に確保するために、大学の教育研究、組織運営、施設設備などの 全学的な状況について、文部科学大臣の認証を受けた評価機関(認証評価機関)による評価を定期的に受ける制度を平成16年度より導入することとしていま す。認証評価機関は、自ら定める大学評価基準に従って評価を行い、評価結果を大学に通知するとともに、社会に公表します。これによって大学は社会から評価 を受けるとともに、評価結果を踏まえて自己改善を図ることとなり、その教育研究水準の向上に資することとなります。


6   専門職大学院制度の整備
   社会経済が大きく変化する中、国際的、社会的にも活躍する高度な専門能力を持った職業人の養成が強く求められるよう になっており、大学が社会の期待に応じる人材育成機能を果たしていく観点から、大学院制度の見直しが必要となってきています。
   このため、平成11年に高度専門職業人養成に特化した 教育を行う修士課程として「専門大学院」制度を整備し、既に経営管理、会計・ファイナンス等の分野で設置され、その取組は高く評価されています。ただし、 この制度は、従来の大学院制度の枠内で制度設計がなされていたため、研究成果の審査の合格が必要とされていることや、教員についても研究指導教員を相当数 そろえることが必要となるこ となど、高度専門職業人養成のために柔軟で実践的な教育を行う上で限界があることも指摘されていました。
   このようなことから、平成14年8月の中央教育審議会答申「大学院における高度専門職業人養成について」を受け、従 来の専門大学院制度をさらに発展させ、様々な職業分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育を可能にする新たな大学院の仕組みとしての「専門職大学院」制度の 整備を行うため、第155回臨時国会において学校教育法を改正しました。
   専門職大学院の分野は、学部段階までに培われた基礎的な能力等を基に広く理論と実務の架橋を図るような教育が求めら れるものであり、社会的に特定の高度な職業能力を有する人材の養成が必要とされている専攻分野や、国際的に共通の水準の人材養成が必要とされるような各般 の分野が考えられます。例えば、法科大学院をはじめとして、既に専門大学院として設置されている経営管理、公衆衛生・医療経営のほか知的財産、公共政策 (行政)などの分野で高度専門職業人養成に特化した大学院が構想されており、将来的にはより多くの分野で多様なものが開設されていくことが期待されます。

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