公教育は,「社会人の育成」として,生徒につぎの概念をもたせる教育を行う:
公教育は,「他人を利用する自由 (われ先に取る,奪う,だまし取る,殺す等の自由)」の主題 ( 商品経済社会における「多様な個の共生」の位相) に対しては,基本的にこれとは離れるスタンスをとる。
市場原理のイデオロギーが流行りの時代には,「公教育も市場原理に立たねばならない!」が風潮になる:
文科省の「改革」政策 : 教育内容を実用的なものに改める(参考),グローバル化,英語教育
東京都教育委員会の施策 : 学校間競争,教員評価,学校の塾経営
国立大学の「法人化」
ファイナンス業界 : ファイナンスを出張授業
等々
この場合,市場原理を強いる側と強いられる側の二分が起こるわけではない。
特に,「市場原理を自分の原理としなければならない側 (経済界) -対- 公教育」という対立構図になるわけではない。
──市場原理を自分の原理としなければならない側でも公教育の側でも,市場原理のイデオロギーに対する好感と反感が個人個人にばらけて葛藤する。
<個人個人にばらけて葛藤>のメカニズムが,「社会」という人間の系のバランス/安定を実現している。
そして,公教育は,どんなに市場原理に席巻されそうに見えても,結局市場原理に席巻されることはない。
それは,市場原理を自由にさせない装置を,社会が (意識的・無意識的に) 必要としているからである。
参考 : |
2008-03-11,札幌で『イノベーション創出と数学研究──諸科学・産業技術の「知の深み」を目指して』と題するシンポジウムが開かれた。文科省委託業務「イノベーションの創出のための数学研究の振興に関する調査」の実績項目の一つになるものである。
シンポジウムの基調講演は文科省担当者による「数学への期待──科学技術政策から」であり,ここではつぎの「数学者=竹林に棲む者」の絵が描かれた:
・ | 数学者と産業人を含む他分野の人間との交流が必要。
→数学者の方々,竹林から出でよ!
→他分野の人々,数学者の意識は高まっている! |
・ | 異分野のことに理解を示す寛容度が必要
→もともと違う言語を話していると思えば,
理解の糸口が開けるのではないか。
→求む!異分野間の言語の翻訳者 |
講演は,つぎの文言で締めくくられる:
・ | これまで数学研究は純粋学問と認識されてきた。 |
・ | 従って,科学技術政策から「忘れられた」。 |
・ | 世界も,社会も,科学技術も程度の差こそあれ閉塞感がある今日,大元に帰る考え方が重要 |
・ | 学問の女王たる数学は最も基礎的な考え方を与える |
・ | されば,数学と他の分野との協働を振興しよう!新たな研究スキームはそのための触媒 |
・ | 新たな試みを成功させるためには,他の分野との相互作用を増すことが必要不可欠 |
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