- 「付加価値アップ」「進路開発」を指導する「生涯学習教育」へのニーズに対し,これに応える形はいろいろ考えられます。
ここでは,大学がこのニーズに応える場合の形を,押さえておきましょう。
- 大学が運営する「生涯学習教育」には,(地方自治体が運営する「生涯学習教育」, WBT 形態の「生涯学習教育」等と比較するとき) つぎのような特徴が挙げられます:
- 教育の安定的供給 (常勤スタッフ)
- 構造化されたコース/カリキュラム
- 実際的(充実した施設・機器と,実技指導・実習)
- ただし,大学が「あれもこれも」といった体で,「生涯学習教育にも手を広げる」ということはすべきでありません。
各大学は,
- 自分のところのシーズ/資源/キャパシティーをきちんととらえ,
- それに応じて自分の特徴を見定め,
- 資源の重点的投入という形で,差別的な「商品」を打ち出す
ということをしなければなりません。
その上で「生涯学習教育はわれわれの有望な商品になる」という結論になれば,「生涯学習教育をやろう」ということになります。
- 「付加価値アップ」「進路開発」の内容,程度は,ひとによっていろいろです。これに応じて,大学の「生涯学習教育」もいろいろに考えられますが,つぎの4つくらいが典型となります:
- 「聴講生/研究生」の形で社会人学生の受け入れを行う。
- 従来の教育内容/コースを「生涯学習教育」のニーズにも応え得る形 (上位両立形) に再デザイン。
(「生涯学習教育」を受けたい社会人は,入学して学生になる。)
- 社会人学生対象の生涯学習教育コースを別枠で設ける。
(「職業教育」のような趣き。)
- 「リカーレント/リフレッシュ研修」の形で,短期間修了のコースを連ねる。
- 高レベルの研究を特色とし研究自体で競争力のある大学は,「生涯学習教育」はタイプAかBに限定すべきです。
その他のタイプの「生涯学習教育」に向かうことは,力/資源の分散を意味します。これは無用です。
- 高レベルの研究を特色にできない大学では,「自己商品としての可能性」という形で考えることの中に「生涯学習教育」も入ってくるでしょう。
この場合,つぎのことが「生涯学習教育」に関わる問題点となります:
- マーケット
- 大学での「生涯学習教育」を希望し,しかも大学に通える圏内にいる人の数は,「生涯学習教育」を経営的に成り立たせるほどのものか?
- 力/資源
- 「生涯学習教育」を起こし,運営を継続する力/資源が大学にあるか?
(なければ,スタッフの疲弊を招き,大学の力を弱める。)
- 大学のアイデンティティー
- 「生涯学習教育」の経営は,大学のアイデンティティーと適合するか?
- つぎの二重の理由で,「生涯学習教育」はかなり大きな都市かその近郊にある大学でしかペイしません。
- 「付加価値アップ」「進路開発」は,人材の流動化の大きな場所(すなわち大都市)でなければ,はかばかしくは動機づけられない。
- 割合的に,大都市でなければ十分な「集客」は見込めない。
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