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数学教育 - マルチメディア - インターネット
ここしばらく,子どもの「理数離れ」が問題にされている。「数学離れ」に限って言えば,無理もないかという感じはもつ。数学学習はつらい。
数学学習の困難の大部分は,学習している主題がさっぱり見えてこないというものだ。見えないものとの格闘に嫌になって数学から離れる。あたりまえだろう。
主題が見えないのは,もともと見えるように表現していないから。見えるように表現してない理由は,1) 見えない人のことが表現者にわかってないか 2) 表現そのものが難しいかのどちらかである。前者は論外なので,問題は後者。
人はだいたいイメージで考える。このイメージを人に伝えるために既存のメディアを使う。このメディアのパワーが弱ければ,表現に無理が生じる。Aさんが「緑色」を文章に表現しその文章をBさんが読むとする。Bさんは「緑色」を読みとることができるだろうか。
数学学習もこんな感じだ。いちばん困るのは,子どもが学習法を誤解してしまうことだ。文章のもとにイメージがあることを知らず,文章を飲み込むことを学習と思ってしまう。それができないのを自分のアタマのせいにする。
数学教育を仕事にする者として,メディアパワーの問題に悩んできた。そしてそんなとき,「マルチメディア」がタイムリーにやってきた。「マルチメディア」の意義はひとによっていろいろだが,わたしにとっての意義は「イメージをイメージとして表現できるメディア」ということになる。
それで4,5年ほど前から(本格的にはこの2,3年間),学校数学で扱う数学的主題のイメージ化を試みてきた。要するに“図説:学校数学”の制作である。
しかし,制作は制作でおわるわけにはいかない。制作したものの配給,流通の問題がある。そしてここでまたもやタイムリーに,「インターネット」がやってきた。「インターネット」の意義もまたひとによっていろいろだが,わたしにとっての意義は「わたしの“図説:学校数学”を地球的規模で発信できるメディア」ということになる。
ただし「発信」と言っても,したいのは「展示」だ。そしてだめ押しという形で「ホームページ」の登場。“図説:学校数学”の展示場もこれでそろった。
あとは,実際にどう運用するかである。いまは,二つの形態を試行している。一つは「オンライン授業」。好きなとき,好きなところでホームページにアクセスし学習して下さいというもの。
もう一つは,「デジタル・プレゼンテーション」形態のリアルタイム授業。教室にノートタイプのパソコンを持ち込み,ネットワークにつないで,ホームページにアクセスする。その画面をプロジェクタでスクリーンに投射する。小規模な設備はこれまでにもあったが,この度大教室の一つになかなかのすぐれものが新設された。個人的にも以前から欲していた設備であり,願いの一つがまたかなった。
ちなみにこの設備,本校(北海道教育大学岩見沢校)の「公開講座」とか「リカーレント研修」といった形でも活用される。また,テレビ会議システムと連動させれば,受講学生数の多い授業も遠隔で行えるようになる。
以上述べてきたように,「マルチメディア/インターネットで何をする?」といった問いは,わたしには無縁のものだった。「これがおまえの欲しかったものだろう」と言わんばかりに「マルチメディア」と「インターネット」がタイムリーにやってきてくれた。ほんとうにラッキーと言うほかない。