Up 資格・学歴の商業主義 作成: 2007-08-20
更新: 2007-08-20


    2007-08-18 の読売新聞に,「卒論・レポートの代行業」が取り上げられている。(下に引用)


    大学に入る目的は,本来,自分が成長すること。
    ところがいまは,資格 (学歴を含む) を得ることが大学に入る目的になった。
    ──大学も,そのような装置に自らを変えようとしている。

    学生は,もはや「学生」ではなく,資格を買う「顧客」である。
    大学は,<資格を商いする者>を自ら任じて,この商いの力を「大学の力」に見なす。 顧客サービスで以て他と競おうとする。(哲学を捨て経営学に傾斜)


    このとき,「勉強」は資格を得るための「形づくり」の一つになる。
    このような「勉強」は,必要最小限・最短が合理的となる。
    学生は,授業にきちんと出席するかわりに,学問・研究をしない。
    資格の商いで世間から認められようとして一生懸命な大学では,こうして学問・研究が消えていく。

    資格取得の「勉強」とは,「授業出席」のことである。
    学問・研究はこの「勉強」にとって余計のものであり邪魔ものであるから,うまくやり過ごさねばならない。
    ここに,卒論・レポートの代行業が,一つの「合理的なソルーション」として現れてくることになる。
    そのうち,「卒論・レポートで学生をいじめる教員がけしからん」という話になってくるだろう。


    この話のテーマは,「倒錯」である。
    「学問・研究」を糧に成長する場が大学であり,この糧に金を払っているはずなのだが,「学問・研究」を邪魔にする。
    お菓子の付録が目的になるとき,本体が捨てられる。 メーカーも,その顧客行動にのっかっていく。
    割りの合わない金の使い方をしているのだが,子どものアタマはその程度のものだ。 大人が指導すればよいのだが,大人はこれを商売にする。


    2007年8月18日 読売新聞
    http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070818i111.htm

    1文字5円、卒論に代行業者…大学は「見つけたら除籍」

     大学の卒業論文やリポートの執筆を有料で請け負う代行業者が登場し、波紋を広げている。

     学生がインターネット上で見つけた資料をリポートなどに引き写す「コピー&ペースト」が教育現場で問題となっているが、これを上回る究極の「丸投げ」で、文部科学省は「事実とすれば、到底認められない行為」としている。

     ネット検索大手のグーグルも、「こうした代行は不正行為にあたる」と判断、代行業者のネット上の広告掲載を禁止する措置に踏み切った。

     「国立大の学生・院生を中心としたチームなので安心の品質」「6年で740件の代行実績」。ある代行業者のホームページ(HP)には、そんなうたい文句が並ぶ。別の業者のHPは「社員は学生時代に必要最低限の勉強量で優やAを取ってきた精鋭ぞろい」とアピールしている。

     料金は1文字5円程度。納期は卒論で1週間以上、リポートでは2、3日以上が多い。テーマや内容、分量、納期などを指定のメールアドレスに送り、その後のやりとりで合意すると正式契約となる仕組みだ。こうした業者のHPはネット上で少なくとも三つ確認されたが、個人レベルで請け負っているケースもあると見られる。

     このうち、昨年4月から事業を始めた業者が読売新聞の取材に応じた。これまでに300件近い問い合わせを受け、実際に100件以上を請け負ったという。2万字程度のリポートで10万円、発表会のための個別指導を含む卒論執筆だと35万円からという料金設定にしている。

     事業を取り仕切る20歳代の男性は「もともと大学院の入試対策を有料で行うつもりだったが、依頼の大半は卒論やリポートの代行だった」と明かす。法律関係が依頼の半分近くを占め、文学、経済関係も多い。理系では物理や化学は皆無で、情報科学の依頼が数件ある程度。これまでに、「単位が取得できなかった」「発覚してしまった」という苦情は寄せられていない。

     「卒論を3日で仕上げてくれ」など、安易に代行を頼む学生もいるが、この男性は「依頼者の多くは、教員に放任扱いされ、課題にどう対処すべきか悩んでいる。我々がやっているのは、最後の駆け込み寺のようなもの」と主張している。

     これに対し、この業者のHPをネット上で見つけた京都府立大の川瀬貴也准教授は、今年1月、「あなたたちのしていることは犯罪。即刻やめるべきだ」というメールを送った。「『卒論を代わりに書く』という商売があるとは、とんでもない話。発覚すれば、学生の単位を取り消すどころか除籍処分ものだ」と憤る。

     文部科学省大学振興課も「いかなる理由があろうと、他人に卒論やリポートを書いてもらうことは、常識からも認められない」との見解だ。ただ、大学側からの事例報告などがないため、当面は調査などはせず、様子を見守るという。

     一方、検索大手のグーグルは今年5月、卒論代行業者の広告掲載を禁止した。検索語と関連するウエブサイトが広告として掲載される機能で、今回の禁止措置について、グーグル広報部は「情報提供や執筆のサポートではなく、全部を代行するというのは、不正行為にあたると判断したため」と説明している。