Up 「割り箸論争」の効用 作成: 2007-12-12
更新: 2007-12-12


    かつて「割り箸論争」というのがあった。 「森林破壊させないために割り箸を使わない」運動 (「持ち箸運動」) が起こり,そしてこれに対する反論が起こった。

    この運動は,「環境問題を取り上げれば,問題領域が複雑に拡がっていく」を知らしめるという効用がある。 (そしてそれ以上のものではない。)


    実際,「持ち箸」の論者は,「持ち箸が森林破壊を防ぐことになる」を示すことができない。 「持ち箸が森林破壊を防ぐことになるのか?」の形の問題には,思考停止する。

    持ち箸運動に対する反論の仕方も,この思考停止を許してしまう形のものであった:
      「日本の場合,割り箸は間伐材の利用であり,
       そして間伐は森林保護の方法である」
      「洗い箸は水を汚染する──どちらが環境によい?」
    これは,
      「持ち箸は森林破壊を防ぐことになるが,しかし‥‥」
    の形である。


    一般に,ひとはロジックの問題を適切に立てられない。 (ロジックは,ひとの苦手とするところである。) そして,ロジックがぐちゃぐちゃな状態で,論争してしまう。

    この論の最初に,
      (持ち箸運動は)「環境問題を取り上げれば,問題領域が複雑に拡がっていく」を知らしめるという効用がある。
    と述べたが,これにさらにつぎのことを加えてもよい:
      持ち箸運動は,「環境問題が論じられるときのロジック」を問題意識にもたせるという効用がある。


    持ち箸運動を志向するひとは,自己確証の意味で,つぎの問題に取り組んでみるとよい:
      つぎを証明せよ:「持ち箸は,森林破壊を防ぐことになる。」

      この問題の要点:
    • 「森林破壊を防ぐ」の内容 (具体的および科学的内容)。
    • <持ち箸>からスタートして<森林破壊を防ぐ>に至る推論のステップと推理のロジック。