Up カミュ『ペスト』ブーム──「ペスト」の読み方 作成: 2020-04-13
更新: 2020-04-13


    カミュの『ペスト』が,ちょっとしたブームになっているようである。
    《「新型コロナ」を「ペスト」に見立てて,自分の立ち位置を考えてみたい》というわけだ。


    カミュは,1970年前後のいわゆる「全共闘時代」に,よく読まれていた。
    その時代は,各人が自分なりに清算しておくべきテクストというのがいくつかあって,カミュはそのうちの一つだったのである。
    そしてそのときは,《カミュが対峙した時代状況を自分がいま対峙している時代状況に見立てて,自分の立ち位置を考えてみたい》であった。

    テクストはどう読もうと「ひとの勝手」となるものだが,やはり「とんでもない誤読」というのは考えてみたほうがよい。
    この度の「新型コロナ」パニックでは,「ペスト」に代入されることになるものは「新型コロナ」か?


    『ペスト』の「ペスト」は,シンボリックなものであって,これの一般化は「菌感染症・ウィルス感染症」ではない。
    ひとの<生>を破壊するこの感染症は,「正義」を装った全体主義である。
    『ペスト』の主題は,正義/全体主義に対する「反抗」である。

    現前の「新型コロナ」パニックの場合,「ペスト」に代入されるものは,「自粛」を正義にする全体主義である。
    そして,「自粛」要請に背く(てい)で営業している者,外出している者が,この全体主義に「反抗」する者ということになる。
    よくよく吟味すべし。