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読売新聞, 2020-08-26
「指定感染症」負担に
厳格措置 見直し議論 厚労省機関
4〜6月
厚生労働省の助言機関は、新型コロナウイルスを感染症法上の暫定的な「指定感染症」に位置付けていることについて、見直しの議論を始める。
この位置付けは、感染者への入院勧告や就業制限などの根拠となっている。
夏に入り、無症状や軽症の感染者が多く報告され、医療機関や保健所などの機能を圧迫しているとして、見直しを求める声が上がっている。
軽症者も入院 医療圧迫
■ 拡大防止策
「医療機関や保健所の負担につながっているとの指摘がある。何が課題かも含め、議論してもらう」。
加藤厚生労働相は25日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いについて、厚労省の助言機関が検討を始めることを明らかにした。
入院させる対象者が多くなり、保健所もその振り分け業務が増えるとの指摘がある。
助言機関は、規制の必要性と課題を整理し、政府の感染症対策分科会に報告する。
中国・武漢市で最初に流行した新型コロナは、1月中旬に日本で初めて感染者が確認された。
中国で多くの死者や重症者が出ていたため、政府は、指定感染症に位置付け、かかった場合の危険度が高い順に5段階に分けた上から2番目の「2類相当」とした。
入院勧告や就業制限を行えるようになり、政府や自治体は、感染拡大防止策をスムーズに進められるようになった。
これまでに指定感染症となった、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、鳥インフルエンザのH5N1、H7N9は現在、いずれも2類となっている。
だが、新型コロナの感染者のほとんどは、無症状か軽症であることが分かってきた。
夏に入り、5月までの第1波に比べ、無症状者や軽症者の患者の割合が増え、「指定感染症になっていることで、軽症者も入院することになり、医療機関の病床を圧迫している」などとの指摘が医療関係者からも上がり始めた。
2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1)は、流行が収束し、しばらくしてから位置付けを変えた。
当初、指定感染症ではないものの、1類相当の厳しい措置を取る対象だったが、11年4月には従来の季節性インフルエンザと同様に5類とした。
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感染症 危険度5段階 コロナ「2類相当」
感染症法は、ウイルスや細菌による感染症を、症状の重さや感染力に応じ、基本的に1〜5類の5段階に区分している。
1類には、エボラ出血熱やペストなど、感染者の死亡率が高い感染症が並ぶ。
これに次ぐ2類は、結核やSARS、MERSなどだ。
毎年冬に流行する季節性インフルエンザや、麻疹(はしか)は、危険度が最も低い5類に位置づけている。
分類に応じて感染者への措置などが異なる。
1、2類では、感染者は原則として入院することになり、拒否した場合、知事が入院を勧告できる。
1類だけは、病原体に汚染された建物の立ち入り制限も可能だ。
また、1〜4類は、全ての感染者の情報について、医師は直ちに保健所に届け出る必要がある。
5類は、原則7日以内に届け出る。
新型コロナウイルスが指定を受けている「指定感染症」は、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある感染症が対象となる。
緊急時に柔軟に対応するため、1〜3類に準じた取り扱いができるのが特徴だ。
当初は2類相当だったが、無症状者の入院措置など、1類相当の規制も行えるようにしてきた。
政令で指定し、1年で失効するが、1 年に限って延長できる。
新型コロナは、来年1月末が当面の期限となっている。
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