Up 「老人介護施設SH 感染133人死亡25人」の教え 作成: 2021--05-09
更新: 2021--05-09


      神戸新聞NEXT, 2021-05-07 21:30
    介護施設でクラスター133人感染、25人死亡 神戸
     神戸市は7日、同市長田区大日丘町3の介護老人保健施設「サニーヒル」で4月14日以降、入所者97人、職員36人の計133人が新型コロナウイルスに感染する大規模クラスター(感染者集団)が発生し、うち70代以上の入所者25人が死亡したと発表した。
     市内の医療体制の逼迫で、感染した入所者は基本的に施設でそのまま療養しており、重症化して転院できたのは3人だけ。死者25人のうち23人は施設で死亡し、その多くは入院調整中だった。死者の内訳は男性8人、女性17人。
     施設は定員150人(一般棟80人、認知症専門棟70人)で、4月16日時点の入所者は133人、職員は121人。常勤の医師3人と看護師16人を配置し、7階建ての3〜6階が老健施設で各階で感染者が出たため、各階をゾーニングしていたという。
     認知症の入所者らはマスク着用が困難で、職員も防護服を着ないままレッドゾーンに立ち入るなど、感染対策に不十分な面もあったといい、市保健所や厚生労働省の地域支援班も連日、支援に入っていた。
     市は5人以上の感染者が出た4月15日の時点でクラスターと認識したが、これまで公表していなかった。市健康局の熊谷保徳副局長は「感染者が増えすぎて業務が逼迫し、(広報まで)手が回らなかった。申し訳ない」と謝罪した。


    世の中は,「どうしようもない」ことで成っている。
    しかしひとは,世の中をコンプライアンス社会に見立てるようになり,「どうしようもない」を言うことを許さなくなった。
    ひとは,「どうしようもない」を言えない立場が自分に回ってこないことを,願うばかり。


    老人介護施設で感染が発生したら,どうするか。
    法律により陽性反応者すべてを入院させ,濃厚接触者を自粛させる。
    老人介護施設の場合は,施設をそのまま「入院施設」に見立てることになる。
    実際,「入院」といっても,いまの時節は「在宅・ホテル」である。
    入院させた要介護老人の世話は,職員がするしかないのである。──他にだれがやってくれる?

    こうして施設は,かつてのクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のようになる。
    大腸菌培養のシャーレのようになるわけである。


    しかしこれは,どうしようもないことである。
    「入所者は133人、職員は121人。常勤の医師3人と看護師16人」を,だれがどんなふうに扱えるというのか?

    要点はこうである。
    ものごとは,メリットとリスクが表裏になっている。
    集団感染の多数死亡は,老人介護施設のリスクである。
    このリスクが許せないなら,老人介護施設を禁じろとなる。
    老人介護施設が要るというなら,このリスクを呑めということである。


    津波リスクが許せないなら,海の近くに住むことを禁じるとなる。
    しかし,海の近くはひとが住む場所であり続ける。
    原発事故リスクを許せないなら,原発を禁じろとなる。
    しかし,原発はひとが頼るもののままである。
    集団感染の多数死亡を許せないなら,老人介護施設を禁じろとなる。
    しかし老人介護施設は,ひとが必要とするものであり続ける。

    一方,コンプライアンス社会は,リスクテイクを智慧とすることを許さない。
    いまの時代は,つぎのことばを禁句とするのである:
      災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候。
      死ぬる時節には死ぬがよく候。
      是はこれ災難をのがるる妙法にて候。
                   良寛

    災難や死ぬことを嫌がったら,生き方がおかしくなる。
    つぎの言も,このように読むべし:
      武士道と云ふは,死ぬ事と見つけたり..
                   葉隠