Up | 「老人介護施設SH 感染133人死亡25人」の教え | 作成: 2021--05-09 更新: 2021--05-09 |
世の中は,「どうしようもない」ことで成っている。 しかしひとは,世の中をコンプライアンス社会に見立てるようになり,「どうしようもない」を言うことを許さなくなった。 ひとは,「どうしようもない」を言えない立場が自分に回ってこないことを,願うばかり。 老人介護施設で感染が発生したら,どうするか。 法律により陽性反応者すべてを入院させ,濃厚接触者を自粛させる。 老人介護施設の場合は,施設をそのまま「入院施設」に見立てることになる。 実際,「入院」といっても,いまの時節は「在宅・ホテル」である。 入院させた要介護老人の世話は,職員がするしかないのである。──他にだれがやってくれる? こうして施設は,かつてのクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のようになる。 大腸菌培養のシャーレのようになるわけである。 しかしこれは,どうしようもないことである。 「入所者は133人、職員は121人。常勤の医師3人と看護師16人」を,だれがどんなふうに扱えるというのか? 要点はこうである。 ものごとは,メリットとリスクが表裏になっている。 集団感染の多数死亡は,老人介護施設のリスクである。 このリスクが許せないなら,老人介護施設を禁じろとなる。 老人介護施設が要るというなら,このリスクを呑めということである。 津波リスクが許せないなら,海の近くに住むことを禁じるとなる。 しかし,海の近くはひとが住む場所であり続ける。 原発事故リスクを許せないなら,原発を禁じろとなる。 しかし,原発はひとが頼るもののままである。 集団感染の多数死亡を許せないなら,老人介護施設を禁じろとなる。 しかし老人介護施設は,ひとが必要とするものであり続ける。 一方,コンプライアンス社会は,リスクテイクを智慧とすることを許さない。 いまの時代は,つぎのことばを禁句とするのである:
死ぬる時節には死ぬがよく候。 是はこれ災難をのがるる妙法にて候。 良寛 災難や死ぬことを嫌がったら,生き方がおかしくなる。 つぎの言も,このように読むべし:
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