Up 濃厚接触有給休暇の日給は,国が支払う 作成: 2022-02-05
更新: 2022-02-05


    国が企業に損害を強いるとき,国はその損害を補償することになる。

    国は, 「濃厚接触者は (施設ないし自宅に) 隔離する」を定めた。
    濃厚接触者になった就業者は,有給休暇をとって休む。
    企業が支払うこの日給は,国が濃厚接触者隔離を定めたことによる企業の損害である。
    よって,国はこの損害を補償することになる。
    即ち,濃厚接触有給休暇の日給は,国が支払う。

    企業は,国に支払いを求めるために,濃厚接触者になった員には,このことの証明書を提出させる。
    国は<証明された濃厚接触有給休暇>に対して金を支払うことになるからである。
    こうして世の中は,証明書を取得しようとする者が多数発生して,てんやわんやになる。

    マスコミはいつもズレているが,ここでもズレを曝す。
    有給休暇を認めてくれない」の声をさがして「企業が労働を強制する」のストーリをつくる。
    有給休暇を認めてくれない」は,「企業のいじわる」の話ではなく,「証明書方式の限界」の話である。


    濃厚接触者隔離期間は,2週間から10日,10日から1週間,1週間から5日,となし崩しに減らされ,濃厚接触者隔離の無意味を暴露している。
    期間の縮小を求めてくるのは,企業であり,濃厚接触で社員に休まれると事業が成り立たなくなるからである。
    しかし,期間の縮小は,国にとっても必要である。
    濃厚接触有給休暇に対して国が支払う日給は,大きな額になるからである。

    どのくらいの額になるか,試みに概算してみよう。

    総務省統計局『日本の統計2021』「第19章 労働・賃金」によると,
就業者人口 (万人) 3,733 2,992
1人平均月間現金給与額 (円) 414,018 218,661

    月間現金給与額を単純に30で割ったものを「日給」とすると,
1人平均日給 (円) 13,800 7,300

    いま,<就業者人口>に対する<濃厚接触有給休暇を取った者の数>の割合をrとする。
    このとき,国が日給として支払う額は,
        ( (13,800 × 3,733 ) + (7,300 × 2,992 ) × r
        = 73,357,000 × r(万円)
        ≒ 7336.7 × r (億円)

    そして濃厚接触者隔離期間をn日とすると,支払う額は,
        7336 × r × n (億円)

    「濃厚接触者」は,実際には国民全員がこれに該当するようなものである。
    しかし表だって「濃厚接触者」になる者の数は,最終的に 10人に1人としておこう。
    そして隔離日数が最終的に平均5日としよう。
    このとき,国が支払うことになる額は,
        7336.7 × 0.1 × 5 ≒ 3668 (億円)

    近頃は「兆」の単位の数字にすっかり慣らされ,兆以下の額は<はした金>に見えてしまう。
    よって「3668 億円」の評価は悩ましいところであるが,「2021年度の税収 57兆4480億円,そのうち消費税 20兆2840億円」と比べてみよう。
    国にとってこの額の支出は,消費税率を 1.8% 下げたのと同じになる:
        3668 ÷ 202840 ≒ 0.018


    こんなことが色々あって,自粛管制 (「まん延防止適用/緊急事態宣言」) の先には,補正予算作成が待っている。
    さて今度はどのくらいの額が出てくるか。
    見ものである。