Up | 免疫システム | 作成: 2022-02-22 更新: 2022-02-22 |
ヒトの上皮は,これだけある: 上皮は,どんなところか? そこは,細胞 (「上皮細胞」) が敷き詰めている。 ただし,コンクリートブロックで敷き詰められている様ではない。 湿地に布団が敷き詰められている風情である。 細胞と細胞の間からは,液体がしみ出ている。 その液体は,血液である。 血管の末端は,細胞と細胞の隙間である。 血管は末端で消える。 畑の灌漑システムと同じである。 血液は,体の内と通じている。 よって,血液に乗ってウイルスが体の深くまで侵入するということがあり得る。 実際,敗血症はそれである。 血液システムは,病原体に対して弱点になる。 しかしこれは,しょうがない。 細胞に栄養を送るシステムは,病原体に対する弱点とトレードオフしなければならない。 防衛は,弱いところの防衛である。 体の免疫システムは,血液にこれを構えることになる。 病原体攻撃要員として,白血球 (各種免疫細胞) を配備する。 ウイルスにとって,体内への侵入は難い。 ウイルスの侵入先は,ほぼ上皮細胞に限られる。 こうして,ウイルスに対する免疫の攻防の場は,上皮面である。 そこはどのようになるか? 上皮細胞の隙間から,白血球を乗せた血液が大量に染み出す。 傷ついたとき傷口にじわっと液体が広がるが,あれである。 この液がウイルスを取り込み,その中で白血球がウイルスを貪食する。 ウイルスが多数であれば,白血球の攻撃を免れて上皮細胞の中に侵入できるウィルスがある。 ウイルスは,細胞に口を開かせる<鍵>に相当する部位をもっていて,それを細胞の<鍵穴>に相当する部位 (「レセプター」) と結合させ,細胞の中に入る。 それから,ウイルスは細胞の中で分解し,細胞はウイルスの部品を大量につくり,その部品が集合して多数のウイルス個体になり,これらが細胞から出芽するように一個一個出て行く──となる。 ウイルスを白血球が攻撃している場面では,ウイルスが使う鍵 (「抗原」) の同定も併せて行われている。 この情報が,抗原を無効にする (「中和する」) 物質 (「抗体」) をつくる細胞に伝達される。 抗体がつくられ,血液に乗って運ばれ,そしてウイルスの抗原を中和する。 とまあ,免疫学の知見では,免疫システムはこんなストーリーになる。 しかし,このストーリーでわかったつもりには,到底なれない。 細胞のチームワークがどうして成るのか? ここがブラックボックスになっている。 免疫学者は,細胞シグナルモデルを立てる。 細胞間でシグナル物質の受け渡しが行われるというモデルである。 免疫反応でのシグナル物質は,「サイトカイン」と呼ばれる。 しかし,細胞のチームワークは,コミュニケーションシステムがあれば成るわけではない。 チームワークはうまくいかねばならない。 そして,「うまくいく」は,コミュニケーションシステムで説明されることではないのである。 |