Up <個>の解体 : はじめに 作成: 2017-10-11
更新: 2019-12-09


    <わたし>は,<個>のわたしとして考えられるものである。
    実際,<わたし>は<個>の内包,<個>は<わたし>の外延,ということになる。
    <わたし>と<個>は,同時の契機である。


    <個>があることは,生物一般において,あたりまえのことではない。
    それどころか,生物一般では,<個>を立てられないのがふつうになる。

      例えば,クローバーは,地下茎でつながっており,地下茎が切れることにより,それぞれ生きられる部分が複数できる。
      カワヤナギは,枝を折って土に挿せば,木に成長する。
      クローバーやカワヤナギは,複数の可能的<個>が複合している(さま)である。──植物が不定形である理由は,これである。
      このようなものには,<個>を立てることができない。

    実際,<個>が措定できる生物は,動物である。

    動物は,文字通り,<動く>に本質がある。
    この<動く>は,生物一般の<カラダのシフト>とは区別される。
    生物一般の<カラダのシフト>は<自己組織化>の一内容である。──生物は自己組織化する系である
    一方,動物の<動く>は,自己組織化のダイナミクスでは実現されない。
    即ち,<動く>を実現するのは,中枢からの命令である。
    この「中枢」を「脳」と呼ぶ。
    よって,動物とは,脳をもつ生物のことである。

      ただし,<脳をもつ>は進化の中に現れてくるものであるから,<脳をもたない>から<明確に脳をもつ>の間はグラデーション模様になる。

    脳の命令を以て動く動物は,定形になる。
    脳の命令は,組織の一定形を想定して成り立つものだからである。

    脳の命令を以て動く動物は,分身しない。
    脳は,分身ができないからである。

      「分身」は,プラナリアの「体の断片からの再生」とは区別される。
      後者は,DNA に関してクローン生成だが,脳に関しては初期化である。

    「定形」「分身しない」は,存在を<個>のように見せる。
    こうして,脳の命令を以て動く動物は,<個>を現す。

    <個>を現す動物は,行動において<わたし>を現す。
    こうして,<わたし>は,脳の発現である。


    しかし,<個>は,《これの存在を考え出せば,存在が見えなくなる》というものである。
    実際,<個>は,<システム>である。
    また,<個>は,<生物群体>である。
    <個>は,その内容がつねに入れ替わっている。

    <個>は,<個>の科学によって解体する。