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Darwin (1881), pp.107-109
(Darwin が観察したミミズは,オウシュウツリミミズ Lumbricus terrestris)
ミミズはふだん、地表の近くで暮らしているのだが、乾燥した天候が長く続いたり、寒さが厳しい時期には、かなり深いところまで潜る。
‥‥‥
一般にトンネルは、ミミズが排泄した黒っぽくて細かい土で薄く内張りされている。‥‥‥
掘られたばかりのトンネルの壁には、排泄されたばかりでまだ柔らかくてねばねばした小球状の土が点在していることが多い。
ミミズがトンネル内を上下するうちに、それらの土粒が壁一面に塗り付けられていくのだろう。
そのようにしてできた内張りは、乾くにしたがって綴密ですべすべになり、ミミズの体にぴったりフィットしたものになる。
ミミズの体表からは、小さな剛毛が列をなして後ろ向きに生えている。
トンネルの内張りは、それらの剛毛にとって格好の足掛かりとなる。
つまり内張りされたトンネルは、ミミズのすばやい動きを可能にする構造になっているのだ。 ‥‥‥
巣穴のトンネルは単に掘られただけのものではなく、むしろセメントで内張りされたトンネルに喩えられるものだと思われる。
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同上, pp.110,111
巣穴の入口も、葉で内張りされている場合が多い。
これは、巣穴を塞ぐ本能とは別の本能であ[る。] ‥‥‥
2つのポットで飼育しているミミズに、ヨーロッパアカマツの葉をたくさん与えてみた。
そして何週間か後に、注意深く士を掘り返した。
すると、斜めに掘られた三本のトンネルそれぞれの上部が7インチ、4インチ、3.5インチの範囲でマツ葉と、食物として与えた別の葉の断片で内張りされていた。
マツ葉の隙聞には、土の表面にばらまいておいたガラスのピーズやタイルのかけらが押し込まれていた。
その隙間も、ミミズのねばねばした土の糞で塗りこめられていた。
そうやって作られた構造物は、しっかりと固まっており、丸ごとそっくり、ほんの少しだけ土がついた状態で取り出すことができた。
それは、やや湾曲した筒で、側面の穴や両端から内面がのぞき込めた。
マツ葉は、すべて基部の側から引きずり込まれており、針葉の鋭い先端は、ねばねばした土の内張りの中に押し込まれていた。
きちんとそうなっていなかったとしたら、鋭い針葉のせいで、ミミズはトンネルにうまく潜り込めないはずである。
それは、尖った針金を漏斗状に組み合わせることで、獲物が入ることはできるが出ることは難しくて不可能に近い罠のようなものになっていたはずである。
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飼育しているミミズでこうした観察をした後、近くにヨーロッパアカマツが何本か生えている花壇の巣穴を調べてみた。
すべての巣穴の入口は、1〜1.5インチほどまでマツ葉を引き込むという通常のやり方でふたがされていた。
飼育下との違いは、多くの入口は、深さ4〜5インチほどまで、やはりマツ葉と他の葉の断片で内張りされていたことだ。
前述したように、ミミズは、巣穴の入口近くにずっととどまっていることが多い。‥‥‥
ミミズがいつもマツ葉の上にいることは、マツ葉の表面は汚れていないうえに、ほとんど磨かれたような状態であることから、まず間違いなかった。
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同上, pp.111,113
地面に深く潜っているトンネルのいちばん奥は、ふつうやや広くなった小部屋で終わっているか、そうなっている場合が多い。
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私は、サリー州アビンジァーで、一つは36インチ、もう一つは41インチの探さのトンネルで、いちばん奥が似たような部屋で終わっているのを見つけた。
どちらの部屋も、大きさがカラシナの種子程度の小粒の石が敷き詰められ、内張りされていた。
そのうちの一つ'からは、殻つきのままのカラスムギの腐った種子が一つ見つかった。
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奥の部屋の壁に埋め込まれた石粒や種子は、地表で飲み込んで運び込まれたものと考えられる。
ポットで飼育しているミミズは、びっくりするほどたくさんのガラスのピーズ、タイルやガラスのかけらを巣穴に持ち込むからだ。
なかには口にくわえて持ち込まれたものもあったかもしれない。
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- 引用/参考文献
- Darwin, Charles : The Formation of Vegetable Mould Through the Action of Worms, 1881
- William Clowes And Sons, London, 1881
- 渡辺政隆[訳]『ミミズによる腐植土の形成』, 光文社, 2020.
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