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Darwin (1881), pp.61,52
(Darwin が観察したミミズは,オウシュウツリミミズ Lumbricus terrestris)
ミミズを飼育しているポットの土に葉をピンでとめておくことで、夜にミミズがどうやってものをつかむかを観察できた。
ミミズはいつも、その葉を巣穴に引きずり込もうとした。
その際、葉が柔らかい場合には、葉を吸い込んで小片を引きちぎった。
ふつうは、上唇と下唇を突き出し、葉の薄い端をくわえた。
それと同時に、ベリエも指摘しているように、部厚い咽頭を体内で押し出すことにより、上唇を支える支点にする。
対象が厚くて平らな場合は、やり方が全く違っていた。
体の尖った先端部分を、葉に密着させた上で隣接する体節の中に引き込むのだ。
そのため、見た目には先端部がちょん切れたようになり、体の後部と同じくらいめ太きになる。
するとその部分は少し膨らんだように見えるのだが、それは、咽頭が前方に少し押し出されているせいだと思う。
その結果、咽頭をわずかに引っ込めるか広げることで、葉に密着させて膨らんだぬるぬるの先端部の下側が真空状態になる。
これによって、ミミズと葉はしっかりとくっつくのだ。
この状況で真空状態が生じるのを目の当たりにしたのは、萎れたキャベツの葉の下にいた大きなミミズがそれを運ぼうとしたときのことだった。
ミミズの先端部の真上にあったキャベツの表面がぎゅっと窪んだのだ。
別の例では、ミミズが平らな葉を急に離したとき、体の先端部がカップ状になっているのが一瞬見えた。
ミミズは、同じやり方で水中からでもものをつかめる。
水に浸したタマネギの薄片をそうやって引きはがすのを見たことがある。
新鮮な葉かほほ新鮮な葉を地面に固定しておくと、その端をミミズがかじり取ることが多かった。
ときには、葉の片面の表皮と柔組織のすべてが、かなりの範囲にわたって完全にかじり取られることもあった。
その場合、葉の反対面の表皮はきれいに残されていた。
葉脈は手っかずのままなので、葉の一部が筋だけになることもあった。
ミミズに歯はなく、口もとても柔らかい組織でできている。
したがって、新鮮な葉の端や柔組織は、消化液で柔らかくしてから吸い込むことで食べられているのではないかと思われる。
ハマナ (シーケール) のような硬い葉やツタの大きくて厚い葉をかじることはできない。
ただし、腐ったキヅタの葉の一部が筋だけにされていたことならある。
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- 引用/参考文献
- Darwin, Charles : The Formation of Vegetable Mould Through the Action of Worms, 1881
- William Clowes And Sons, London, 1881
- 渡辺政隆[訳]『ミミズによる腐植土の形成』, 光文社, 2020.
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