Up 脳の進化 作成: 2015-01-11
更新: 2019-12-23


  • 脳進化のダイナミクス
     伊澤栄一 (2008), p.248
     「 脳は最もコストのかかる器官である。
    ヒトの場合、その重さは体重の2%程度に過ぎないが、消費エネルギーは全体の約20%にも達する。
    となると、生存上の必要性と維持に見合ったエネルギー供給がなければ、大型の脳を備えることは容易ではなく、‥‥‥ 経済的にはむしろ、小型の脳が好ましいのかもしれない。‥‥‥
    進化は、脳に一様な量的変化をもたらしたわけではなく、体と共に脳も大きくなるという一般則を保ちながら、そこからさらに脳を大型化させた種と、そうでない種を生み出してきたのである。」


  • 「脳の進化」の内容
     阿形・竹田 (2007):
     「 プラナリアの脳研究は,今までと全然違う新たな視点を提供してくれた。
    すなわち,脳の進化は,[遺伝子の種類やプログラムの複雑性の爆発的な増加によってもたらされたのではなく] "神経細胞の数と種類の爆発的な増加" によって行われたので、はないかと考えられたのである。
    どういうことかというと,
     基本となる遺伝子セットも遺伝子プログラムもあまり変えずに,
     神経幹細胞システムをつくり,
     神経幹細胞での分裂回数と不等分裂を変えることによって,
     神経細胞の数と種類の多様化を生み出した
    のではないか,と考えたのである。」(p.54)
     「 神経細胞は神経幹細胞が等分裂で数を増やすとともに,不等分裂によって種類を増やしている。 もともと一つの神経細胞だったものが,神経幹細胞化した ‥‥」(p.56)


  • 系統進化
     水波誠 (2009):

    1. 1 個の細胞からなる生物(原生動物)にも感覚や行動の機能は備わっている
    2. 多細胞動物の進化とともに,
        情報の受容や運動の制御に特化したニューロン(神経細胞)や,
        ニューロンどうしが連絡しあう神経系(神経網)
      が出現
      ヒドラ(刺胞動物)の散在神経系がその好例
    3. さらに
        感覚ニューロンと筋細胞を支配する運動ニューロンを結びつける介在ニューロンや,
        介在ニューロンが密集し情報の統合機能を果たす中枢神経系
      が出現
    4. 中枢神経系のうち,感覚器官が集中する体の前端部に発達したのが脳(頭部 神経節)
      脳を初めてもつに至った動物は,プラナリア(扁形動物)のような左右相称動物
      古代の左右相称動物から,棘皮動物や脊椎動物に至る旧口動物の系統と,節足動物,軟体動物などに至る新口動物の系統が分岐



  • 参考Webサイト
  • 参考文献
    • 阿形清和・竹田啓行 (2007) :「脳の始まりと複雑化を考察する:細胞からみた脳の進化」
        阿形清和・小泉修[共訳]『神経系の多様性──その起源と進化』(シリーズ 21世紀の動物科学 7), 培風館, 2007. pp.42-60.
    • DrewI, Liam (2018) : I, Mammal : The Story of What Makes Us Mammals.
      • Bloomsbury Sigma, 2018.
      • 梅田智世[訳]『わたしは哺乳類です──母乳から知能まで、進化の鍵はなにか』, インターシフト, 2019
    • 水波誠 (2009) : 微小脳と巨大脳
    • 伊澤栄一 (2008) :「鳥類における大型脳について」, 認知神経科学 Vol.10, No.3・4, 2008. pp.248-254.
    • 鈴木郁夫・平田たつみ (2012) : 大脳新皮質における神経新生プログラムの哺乳類と鳥類との進化的な保存性.