Up 3倍体植物 作成: 2019-05-05
更新: 2019-05-05


      今関英雅 (2009)
    植物は基本的に有性生殖をし、進化の過程で子孫を残すための装置も変化させてきました。
    陸上の植物は、シダ植物の祖先形から裸子植物が、さらにその中から被子植物が進化してきたと考えられています。
    シダ植物では卵子、精子の融合による融合体がすぐに次世代へと発達しますが、
    裸子植物、被子植物になると受精卵が分裂、胚発生をはじめてある段階に達すると胚発生を中止して種子を形成するようになりました。
    そこで、裸子植物、被子植物をまとめて「種子植物」とよんでいます。
    種子をつくるということは植物がもつ遺伝的な性質です。
    植物体は母方由来と父方由来の染色体セットの2種の染色体セットをもっています(そのため2倍体と言います)。
    成長の基本である細胞分裂では、2セットの染色体が倍加し、それらが正確に2等分されますので、娘細胞の染色体セットの数は2と変わりません。
    しかし、自然の条件でも頻度は少ないのですが、発生の初期に倍加した染色体セットが2等分されないで4セットの染色体をもった細胞ができ、これが植物体になることがあります。
    4倍体となりますが植物種としては同一です。
    4倍体植物は正常な減数分裂をし、受精、種子形成をして次世代は4倍体を保ったままとなります。
    2倍体植物と4倍体植物とが交配すると2倍体植物の卵子・精子(1倍体)と4倍体植物の精子・卵子(2倍体)とが融合するので3倍体となります。
    普通の細胞分裂には支障がありませんから3倍体の植物体は正常につくられ、花も咲きます。
    植物種としても同一ですから種子植物です。
    ところが3倍体では卵子・精子形成のときにおこる減数分裂が正常に行われませんので、正常な配偶子ができません。
    そのため種子形成の前提である受精・胚発生が起きないので正常な種子ができないことになります。
    3倍体に種子ができないということは植物種の問題ではなく、減数分裂がうまくいかないだけなので種子植物であることには変わりはありません。

    そこで,3倍体植物の繁殖は<無融合生殖で種子を生産>となる──クローン増殖。