1.2 数学的問題解決論=問題解決能力形成論


     数学的問題解決論は,問題解決機制論の制限──問題一般を数学の問題に限定するもの──ではない。それは徹頭徹尾,問題解決能力形成論(註1)である。

     そのようなものとして,数学的問題解決論を,
      (1) 問題解決能力論
      (2) 問題解決能力形成機制論
      (3) 問題解決能力形成実践論(指導論)
    の三つに分けることができる(註2)。そして (1) はさらに,
      (1.1) “good problem-solver”の概念規定
      (1.2) “問題解決能力”の措定
      (1.3) 問題解決能力機制論──問題解決能力の機制についての論考
    の三つに分けて考えられる──但し,この分類は,数学的問題解決論者の意識に上っているもの(思っていること)の記述ではなく,彼らが実際にしていること/しなければならないことの分類である。



    (註1)“能力育成”ではなく“能力形成”の言い回しを用いる。“能力形成”の言い回しは日常語的に不自然であるが,合理主義的オリエンテーション下の“能力”解釈では,“能力育成”ではなく正に“能力形成”になる。

    (註2) コンピュータ・シミュレーションをつねに念頭においている認知科学内問題解決論では,問題解決能力を全く内容フリーなものとして直接主題化するということはない。そこで本論では,問題解決能力の主題化を,問題解決能力形成の主題化と併せて,数学的問題解決論に帰属させ,同時に数学的問題解決論を問題解決能力形成論として特徴づける。