3.10 ストラティジーの所有


     問題解決論のオリエンテーションでは,問題解決主体は自分が所有しているストラティジーを使って問題を解く(註1)

     特に,“ストラティジーの所有”が問題解決の内的な要件であることになる。そして,“わからない/できない”は,自己の内なる欠落”のことばで説明されところのものとなる(註2)

     “ストラティジーの所有”の概念は,“ストラティジーの所有形態”,“ストラティジーの発動形態”の問題をもたらす。

     合理主義的(特に,表象主義的)オリエンテーションに従うならば,ストラティジーは内的な命題として所有される。即ち,ストラティジーを言い表わす命題/命令文が,その意味を保存しつつ形のみを変えて──即ち,翻訳として──内的に所有される。そして,命題的態度 propositional attitude (Cf. Fodor,1978) としてストラティジーが発動していることになる。



    (註1) The method resides in the problem solver prior to its evocation to deal with any individual task. Thus the method must be fashioned without specific knowledge of the particular problem situations it will be called upon to handle.
    (Newell and Simon,1972,p.91)

    (註2) 問題解決論のオリエンテーションでは,問題解決は問題空間の探索であり,よって解決不能とは探索に失敗することである。それは,ある障害に全ての手続き(ストラティジー)が躓くということである。したがって,解決不能は,その障害に躓かずに済むストラティジーの欠如として説明されるものになる。