3.13 問題解決機制論の基底


     ストラティジー発動の無限後退の論難を免れるためには,ストラティジー発動を表象の作用とは異なる事態として考えなければならない。

     即ち,ストラティジー発動は,自動機械のプログラムとして理解されねばならない。(Newell and Simon の Logical Theorist はこの設計を採用している。)──探索の現実的解決法としての“heuristics”は,このレベルの機制であると見なされる。(現実には,厳密な身分づけの下でこの用語が使われているわけではない(註)。)

     “プログラム”の概念を問題解決主体に移すならば,それは“傾向性”になる。結局,問題解決機制論は,その根底に“傾向性”というブラックボックスを用意しなければならない。この事態は,“説明はどこかで終わらなければならない”という Wittgenstein のことばと符合する。



    (註) “[「問題空間」と呼ばれる]可能性空間は巨大なものになるので,コンピュータ・プログラムは探索を絞ったり,各ノードの評価値を与えるような「ヒューリスティック」を用いることになる。探索では選択肢の一部しか検討されず,知識が不完全な部分は評価ヒューリスティックによって補われる。”
    (Winograd and Flores,1986,pp.33,34)