6.2 “ストラティジー指導”の発想経路


     “ストラティジー指導”の発想は,合理主義的オリエンテーション下にあって初めて現出し得た。この発想の経路をここで改めて確認しておく。

     合理主義的オリエンテーションは,問題解決を問題空間における探索として解釈させる。探索の選択肢は,手続き的表象としてのストラティジーである。ストラティジーが作用する表象は問題に依存する。しかし,ストラティジーは問題に依存しない。よって,“ストラティジー”の概念は“問題解決能力”の対象化を可能にする(ストラティジーに実体化される概念として)。──こうして,“問題フリーな問題解決能力”という途方もない内容の概念が,“ストラティジー”の概念から簡単に導かれてしまう。

     さらに,ここで描かれた図式は,“問題解決能力の形成”を現実的なもののように見せる。何故なら,ストラティジーは,手続き的な表象とはいえ表象には違いない。さて,“表象”に対するわれわれのイメージは“知識”である。したがって,“ストラティジーの形成”は“知識の形成”のようにイメージされる。ところで“知識”の形成は現実的なものである。したがって,ストラティジーの形成も現実的である。結局,問題解決能力は形成できる。