6.5 “ストラティジー指導”の実際


     “ストラティジー指導”研究については,ストラティジーの特定と“とにかく問題を解かせてみる”というところで終始しているのが,現状である(註1)

     ストラティジーの特定では,問題解決機制論に従えば,ストラティジーのレパートリーをむやみに増やすことはできない。一見,不足するよりは多過ぎる方がましなように(特に,算数/数学科で扱うことになる手続き的知識はどれもストラティジーに加えてしまえばよいように)思われるが,問題空間の爆発的肥大という理由から,そうはならないのである(註2)。しかし,本節のはじめに述べたように,われわれは問題解決機制論を暗黙に破棄して問題解決能力形成論に進んでいる。したがって,ストラティジーのリストアップに関しては,特に制約はない。



    (註1) The single most effective means for improving children's problem-solving performance is to have them try to solve a wide range of types of problems over a prolonged period of time without specific instructional intervention.
    (Lester,1983,p.241)

    (註2) 問題解決機制論を優先するときは,問題解決能力は,
      (1) 少数のストラティジーと
      (2) 生成的過程
    の対で考える他ない。特に,ストラティジーのリストアップ作業は,(1) に対応して,ストラティジーの候補絞りでなければならない。