われわれは自然数 を,色々あるものとしてではなく,ただ一つのものとして意識している。したがって,ペアノの公理による“自然数の定義”が真に自然数の定義になっているためには,それによって自然数が一意に定まるのでなければならない。
ここで“ただ一つ”とは,“同型の意味でただ一つ”ということである。
自然数の系の同型は,つぎのように定義する。即ち,ペアノの公理を満たす二つの系( ,1,f)と( ,1,f)が同型であるとは, と の間の1対1対応h: ─→ で条件:
1°
| h(1) = 1
|
2°
| つぎの図式は可換:
|
|
を満たすものが存在すること(註))。そして実際,このようなhは存在する──かつ
h(fn(1)) = fn(1)
で定義されるものに限る。
一般に,ある公理系で定義されるところのものが“同型の意味で一つだけ”であるとき,その公理系は“カテゴリカル”であると言われる。ペアノの公理系は,カテゴリカルな公理系の一つの例になっている。
(註) “コピーh:( ,1,f)─→( ,1,f)”の概念の定式化は,このようになる。