Up 2.1.4 "生体・屍体"  


     先の"生体−屍体"の対置(§1.1,§1.2)は,§2.1.2 で登場させたアナロジーを用いてつぎのように説明できる。

     即ち,"生体"とは,場を伴い,場の中でのコミットメントにおいて意味付けられるような存在者の謂いであり,これに対し,"屍体"とは,場を伴わず,それ自身によって意味付けられる──例えば,それの〈内〉によって──ような存在者の謂いである。両者を区別するものは,"コミットメント"の概念の成立の有無である。

     運動は,屍体の組織で説明されるものではない。この説明では,"力"が抜け落ちてしまう。──誤解のないようにしよう。"力"とは"場の力"のことである。われわれは〈内〉の力によって動いているのではなく,われわれを包摂している場の力(コミットメントの関係に生じる動因)で動いているのである。このように動いていることが"生きている"ということであり,われわれが屍体でないことの証拠である。