Up 3.7 低迷と覚醒  


     わたしは,学習を〈低迷−覚醒〉の図式で捉えるとしよう。

     言語ゲーム主体は,まさに覚醒("悟り")という様相で誕生する。実際,言語ゲーム主体の誕生は,一つの身体が出来上がること──この一部として,一つの脳(状態)が出来上がること──であり,それは成長のカタストロフィー点である。これの特異性を表現する言葉として,わたしは"覚醒"より適切な言葉を差し当たり見出せない。

     〈誕生以前〉は誕生のための必要条件であるが,これの機能的様相は〈できる〉に対する〈できない〉である。即ち,それは機能的にはゼロの状態である。わたしはこの〈誕生以前〉を"低迷"と表現する。但し,"低迷"は,下位の〈低迷−覚醒〉の連鎖へとさらに分析されることに対し開いている。

     〈教育=関数〉との関連で言うと,〈低迷−覚醒〉は〈教育=関数〉の様相を述べる概念装置の一つとして導入されていることになる。即ち,〈教育=関数〉のインプットの中にあった子どもを関数の中でトレースしようとする場合,〈低迷−覚醒〉は子どもの変容過程を捉える第一次的な枠組み──最も粗い枠組み──になる。