Up 5.2 テクストへの反応理論の問題領域  


     テクストへの反応理論の問題領域としてわたしが考えるのは,つぎのものである:
      (1) "テクストへの反応"の理解図式
      (2) コミュニケーション論
      (3) 〈内〉の扱い

     (1) の主題が課せられるのは,テクストに対する意味中心主義とでも呼び得るような伝統があり,これの中に投げ込まれているという状態からわれわれが出発することになるからである。われわれは,この伝統に対して自分なりの対峙の仕方をつくらねばならない。

     (2)"コミュニケーション論"は,"テクストへの反応"の中から"コミュニケーション"を焦点化し主題化するものである。これは,テクスト一般のうち,"働きかける主体"が存在しているテクストを取り上げる。

     (3) の問題は (1) と一部重なるものであり,人の運動の説明あるいは記述という主題において人の〈内〉をどのように扱うかという問題である。
    西欧の伝統的発想は,一貫して〈内〉にこだわってきた。近くには,"認知科学"という現象がある。数学教育学でも,認知科学の流行に力を得て,てらいなく〈内〉を議論できるようになっている。(3) の主題は,このような現実を背景としている。