実際,コネクショニズムは組織/メカニズム指向に立ち,かつ,逐次処理コンピュータ・アナロジーによる表象主義/計算主義的トップダウン・アプローチに対する否定をこの組織/メカニズム指向に含意させようとするものである。この結果,PDPモデルは脱-表象,脱-逐次処理となっている。そしてPDPモデルの成立は,そのまま,逐次処理コンピュータ・アナロジーによる表象主義/計算主義的トップダウン・アプローチに対する否定の意義をもつ。 コネクショニズムのトップダウン・アプローチは,表象主義に即いている機能主義のそれとは本質的に異なる。実際それは,“デカルトの小人”の無限後退の問題を免れている。 確かに,研究者の意図はある機能の実現にあり,そしてその機能は表象で把握されているに違いない。しかしこの表象は,PDPモデルにはのらない。この意味で研究者の意図は裏切られていることになるが,まさにそうであることによって,コネクショニズムのトップダウン・アプローチは“デカルトの小人”を免れているのである。機能主義のトップダウン・アプローチでは,研究者は一貫して表象を支配している。これに対し,コネクショニズムのトップダウン・アプローチで研究者が支配しているのは,表象とは異なるパラメータ群である。コネクショニストの意識に表象主義の否定ということがなかったにしても,PDPモデルは自らの成立において表象主義を否定しているのである(註)。 コネクショニスト・モデルは,行動主義と相性のよいモデルである。実際,“神経細胞”間の興奮伝達の関係布置は傾向性であり,それは“能力”,“知識”,“技術”といったことばで表現される傾向性の直接的表現になる。──表象主義的モデルの場合であれば,例えば“知識”は,情報ネットワークといった形で展開されることになる。 (註) 但し,PDPモデルが表象を免れているからといって,直列処理(逐次処理)に表象の原因があるわけではない。“処理型”と“表象”は別の記述レベルに属する。 |