人工システムの場合は,進化がそのような遅いペースで進む必要はないという議論がたまに見られる。内部操作は神経系の場合よりはるかに速く,何百万もの「世代」が一日のうちに生産できるというのがその理由である。しかしこれは二つの点から間違っている。先ず自然は直列的に働くわけではない。[個体発生として]高レベルの生体組織が発生するには何日,何年とかかるかも知れないが,[系統発生として]何百万もの個体が同時に同じプロセスを通過するわけである。この高度の並列性をもってすれば,多少の速度向上など問題にならない。より重要なのは,進化が機械の計算速度で進むという見方が,構造的カップリングという基本仮定を無視している点である。生体が媒体に即して生存するための変化が生じるには,その変化が生体の機能に効果を及ぼすための時間が必要である。進化の過程はカップリングが生じる速度で進むのであり,個々の内部変化が生じる速度で進むのではない。・・・・ われわれが作り得るどのようなシステムでも,進化による変化(あるいは学習)によっては,人間はおろか,ミミズの知能レベルに達することもほとんど考えられない。 (Winograd and Flores,1986,pp.167,168) |