北海道新聞「デジタリアン」シリーズ 第2回 (1997-05-06, 夕刊,)

ホームページが展示場

 ここしばらく,子どもの「数学離れ」が問題になっている。理由の大部分は,学習している主題がさっぱり見えてこないということ。そして,主題が見えないのは,もともと見えるように表現されていないからだ。
 人はだいたいイメージで考える。このイメージを伝えるために既存のメディアを使うが,メディアのパワーが弱ければ,イメージの表現とその再現に無理が生じる。
 数学学習もこんな感じだ。いちばん困るのは,子どもが学習法を誤解してしまうこと。文章のおおもとにイメージがあることを知らず,文章を飲み込むことを学習と思ってしまう。それができないと自分のせいにする。
 わたしにとってのマルチメディアの意義は「イメージをイメージのまま表現できるメディア」。しばらく前から数学的主題のイメージ化を試みている。“図説:学校数学”の制作である。
 インターネットのほうの意義は「“図説:学校数学”を地球的規模で展示できるメディア」。そして「展示場」はホームページ。
 あとは,実際にどう運用するかである。いまは,二つの形態を試行している。一つは「オンライン授業」。好きなとき,好きなところでホームページにアクセスし学習して下さいというもの。
 もう一つは,「デジタル・プレゼンテーション」の形の授業。教室にノートタイプのパソコンを持ち込み,ネットワークにつないで,ホームページにアクセスする。その画面をプロジェクタでスクリーンに投影する。
 マルチメディアとインターネット。それは「これがおまえの欲しかったものだろう」と言わんばかりにタイムリーにやってきた。ラッキーというほかない。