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教授/学習メディアの革新
わたしたちが立てた課題はつぎのものでした:
「数学教育がどのように変わるとき,
- 主題に学習者が没入する
- 主題の良質な理解に学習者が至る
が一つのこととして達成されるようになるか」
この課題に対するわたしの結論は,つぎのようになります:
「教授/学習メディアの革新という形で,しかもこのような形でのみ,この課題は解決可能である」
ここで「革新」の内容は,文字に深く依拠してきたこれまでの教授/学習メディアをいわゆる「マルチメディア」へと改めるということです。
この場合のわたしの論理は,つぎのようになります:
- ある数学的主題の学習が困難なのは,その主題を既成のメディアにのせることにもともと無理があるから。
この場合,あくまでも既成のメディアに即くことで主題を引っ込めることになるか,それとも新しいメディアに賭けるかの,二つに一つの選択になる。しかし,数学教育の立つ瀬は,第二の選択肢にしかない。
現在わたしたちは,教授/学習メディアの革新を課題化できる場所にいます。それは,特に情報通信テクノロジーの今日の進歩がもたらしたものです。
すなわちわたしたちは,つぎのように考えることができます:
- 学習の困難を直ちに主題の難しさのせいにすべきではない。
学習の困難は「旧来の教授/学習メディアの貧しさ」という観点から見直すことができる。
これまでの教授/学習メディアは,学習者にとって非常に負担の大きいもの──最終的に,学習者を拒絶するもの──である。
- いまは,旧来の貧しい教授/学習メディアを甘受する必要はない。
ここで「教授/学習メディアの革新」の内容は,文字に深く依拠してきたこれまでの教授/学習メディアをいわゆる「マルチメディア」へと改めるということです。
ヒントは娯楽メディアです。──娯楽産業においていま最もメディアの可能性と重要性が認識されている,そんな感があります。教育界は,メディアについての認識とメディア開発の実践において,娯楽産業にかなり遅れをとっているように見えます。